熱海型DMO、宿泊税とリンクせず実施へ/第2回観光戦略会議

熱海市は10月30日、2019年度から5年間の熱海市観光基本計画を策定する第2回「熱海市観光戦略会議」を開いた。メンバーは座長を務める齋藤栄市長、JTBの武田道仁地域交流事業推進担当部長、中島幹雄市観光協会連合会会長、目黒俊男熱海市ホテル旅館協同組合連合会理事長、森本要副市長、西島光章観光建設部長の7氏。立見修司観光建設部次長が当局(事務局)を代表して説明を行った。

この日の協議事項は新しい基本理念を設定して方向性を決めることと、具体的な骨子を協議するために同会議内に「熱海型DMO構築に関する検討部会」「新たな観光財源検討部会」設置の2点。新基本理念については、市が「変化しつづける温泉地熱海」を提案し、具体的な目標に①将来のリピーター層に想起される新・熱海ブランドの構築②市内回遊性の向上と伊豆箱根エリアにおける観光ハブ拠点化による新たな来遊客の創出ーーを柱とする「『首都圏』顧客支持率ナンバー1 温泉観光地 熱海」を掲げ、出席者から同意を得た。また熱海型DMOは観光税(宿泊税)とはリンクせず、新税の導入いかんにかかわらず、実施する方針も明らかにした。

齋藤座長は「熱海型DMO構築に関する検討部会」および「新たな観光財源検討部会」の設置理由を次のように述べ、同意を求めた。

「いま成功している世界の観光地の潮流はDMOにある。行政、民間等々が連携するところから一歩踏み込んで一体となり、観光地経営するもので、観光企画立案のかじ取り取り役を行う。回復しつつある熱海をさらに発展させるためにはDMOの採用を検討したい。その場合、観光地経営としてどのような熱海型のDMOが考えられるかを討議していきたい」

「もう一点は観光財源の確保。過去10年間で市税は10億円以上減っている(2017年度は税収97億円)。毎年1億円ずつ減っており、人口減少を考えると、この傾向が変わることは考えられない。一方で医療や介護などの社会福祉、老朽化したインフラの改修は間違いなく増える。今の観光財源を確保することさえ難しくなっていく。熱海梅園や糸川の花を整備して観光客を増やしたように観光は投資産業。投資し続けなければならないという宿命がある。今後、観光財源をどの様に確保していくか討議していきたい」

2つの部会のうち、熱海型DMOについては各委員から質疑が相次いだ。目黒委員は「地域の稼ぐ力というのは分かるが、既存の観光協会との位置付けはどうなるのか。組織の積み重ねはいかがなものか」とただした。

当局は「過去に観光協会の一体化の取り組みにチャレンジし、頓挫(とんざ)した経緯がある。6地区の観光協会(熱海、伊豆山、多賀、網代、伊豆湯河原、初島)の取り組みを温存しつつ、ガバナンスする今の行政の役割をもう少し機能的にするためにDMO組織を作る。このことによって民間の方々のご意見が反映しやすくなる。行政があって観光協会があってその間にDMOを作ろうとしているわけだが、この3段重ねを我々の考え方としては行政の部分をなくしてしまおうと考えている。形としては、現在の(市の)観光課と観光協会の関係がDMOと観光協会の関係になる。行政のサイクル以上に機動的に動ける組織に改編する。そのことによって、『変化しつづける温泉地熱海』という基本理念に即応できる組織にしていきたい」と一つの案として説明。

中島委員の「観光経済課が(DMOに)降りてきて(協会と)一体化するということか」の問いには、「観光経済課の腹案としてはそういうイメージ。市の職員が外に出てしまうのがいいのかなと。税金を使ってやるのだから、議会との関係、市との関係を整理する必要をある」と答え、「ほかに一緒に観光プロモーションをやっているJTBさん、あるいはJRの方々にもDMO組織に参画いただく。市内の観光協会からも職員として派遣していただくことも含めながらオール熱海で観光を進められるようにしたい。国でいうと独立行政法人的、エージェンシー的な形にしたい」と続けた。

森本委員は「たぶん今の観光協会の方々でやりきれていないところ、これから大事になってくるマーケティングでいえば、データの収集、分析、戦略。そういったところはまだまだ欠けている。その単体でやりきれないところをどうやって対処するのか、議論していくのがこの場。どの方策がいいのかしっかり検討していきたい」

これに対し、内田委員は「聞いていて、観光協会にそれぞれ問題があるのでDMOが出てくるのだろうが、どういうところに問題があるのか具体的に聞きたい。はっきり言ってもらったほうがいい。データ収集なんてそんな組織を作らなくたってできる。今日だってこれだけの詳しいデータを作っているわけだから」と追及。

当局は「観光協会に問題があるのではなく、市の観光を進めさせる仕組みに限界があると。一つひとつの施策について議会に承認していただいて、予算を付けて年度で執行している。そのあたりの権限をDMOという組織に委譲していただいてもう少し、融通を効かした形で予算の使い方であるとか、年度の考え方にしていきたい、というのが熱海型DMOの出発点。民間なら、いまこれが必要だからこれにお金をつけよう、というのが今の行政の仕組みでは対応できない。あるいは年度始めでは予算の執行がなかなかうまくいかない。それを整理することによって熱海の観光が一年を通じて機能する形にしていきたい。観光協会は財源も少なく、人的に立ちいかないところもある、それをカバーするのがDMO組織」と述べた。

内田委員「そこにいく人は市の職員か、よそから呼ぶのか。予算はどのくらいで、何人ぐらいの組織か。ここに書く以上は腹案はあると思うが…」
当局「観光経済課の中で観光振興を担っている職員、それから観光振興に使っている予算がその組織にいくのだろうと。ただ先にも言ったが、市の職員だけでやるのではなく、民間の力、例えば旅行会社の方から出向をお願いするとか、マーケテイングに長けた人を外から雇用するとか、そのような形になろうかと」
内田委員は続けて「人を変えただけで力が出るのか」
当局行政がトップに立とうとは考えていない、外、民間の人をトップに持ってこようと。例えば、熱海市観光協会連合会会長の中島会長にDMOのトップやっていただくこともあるだろうし…。その手となり足となって働くのが市から出向された職員ということだ」

森本委員は「 行政の弱点として専門性の確保と継続があり、その辺の動線が弱い。役人であることの宿命で人事異動がある。観光でやっている街にもかかわらず、その推進主体の一つである専門性が蓄積されていない。組織に必要な専門人材を確保していくことも必要じゃないかと。商工会議所とやっているA-biz事業がまさにそれ。昨年11月から全国公募で専門人材を確保して一気に相談件数、ビジネスマッチング件数、プレスリリース件数等々…。専門人材をいれることによって組織体の運営、中身が高まっている」と補足した。

内田委員はもう一つのテーマである観光税との関連性について、「(新たな観光税が)創生できなくともDMOを作るのか。予算もかかることなので、観光税が固まった上でやるのか、それとは別にやるのか、腹は固まっているのか」と畳みかけた。
森本委員は「私の認識では、このDMOの出来上がりと、新たな財源は完全にリンクしているものではない。観光をさらに推進していく上でDMOが必要という前提でやっている。新たな観光財源ができれば、より大きな事業ができるとは考えている。基本的にはこちらが捻出できなかったとしても、捻出できる一定の予算を活用しながらやっていく」と粛々と答弁した。
当局は、観光財源について「市長が選挙公約に掲げた『宿泊税』」もその一つの考え方。そこだけに止まらず、将来へ向けて熱海観光が継続して発展していくために、必要な財源をいかに確保していくか。それが新税なのか、既存の税(入湯税)の使途を整理することも考えられる」とし、現在入湯税の約半分を充てている観光目的の使途比率を上げる案も浮上した。答弁においても宿泊税の文言は使わず、観光税で一貫するなど、宿泊税導入をにわかにトーンダウンさせている。

また武田委員は新基本理念について次のように意見を述べた。
「仕事柄、いろんなところに行っているが、昔のいいイメージから変化できない観光地というのが実に多い。熱海の強みは、変化しつづけることができた観光地だったことある。ターゲットに若年層を据えたところもいい。若年層ほど自分の嗜好にあったものにしか動かないという価値観を持つ。 時間の過ごし方、デザイン性、ブランド戦力をきちんとやらないとその方々を動かすことができない。高度なマーケティングが必要。熱海であればそれができるのではと感じる。
働き方改革が今後どんどん進み、定時に帰る人とか、会社に来ないで仕事をするとか、他のところで仕事やったりとか、バケーションとワークを一緒にしたワーケーションも始まっている。首都圏に近い熱海からするとそういった距離感の意識が必要なのかなと。
もう一つは、ナイトタイムエコノミー。多くの地域で掲げているが、経済につながっていない。イルミネーションをつけてお客様が増えても、経済活性につながっていない。熱海の場合、夜、お金をつかいたくなるような地域になれるのではないかと。そういうところを意識して取り組んいただきたいなと思う」
次回の観光戦略会議は来年1月18日に開催する。
(熱海ネット新聞・松本洋二)

■熱海市観光戦略会議メンバー 座長=齊藤栄市長▽副座長=森本要副市長▽委員=清水愼一(欠席=大正大学地域創造研究所教授)、柏木千春(欠席=流通科学大学人間社会学部教授)、武田道仁(JTB地域交流事業推進担当部長)、中島幹雄(熱海市観光協会連合会会長)、目黒俊男(熱海市ホテル旅館協同組合連合会理事長)、内田進(熱海商議所会頭)、西島光章(市観光建設部長)

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