熱海躍進のための礎づくりに本格的着手/齊藤市長が施政方針演説

熱海市議会2月定例会が2月22日開会し、齊藤栄市長が38分に渡って施政方針演説を行った。4期目の初年度となる今年を「熱海躍進のための礎(いしずえ)づくりに本格的に着手する年」と位置付け、「観光・経済の活性化」、「教育・福祉の充実」、「仕事・くらしの変革」の3つの柱からなる「熱海2030ビジョン」の実現に取り組むことを表明した。
「観光・経済の活性化」では、本年6月中を目途に新たな観光基本計画を策定。熱海市観光戦略会議で検討を進めている「変化し続ける観光地熱海」を基本理念に観光地経営のかじ取り役としての「熱海型DMO」の構築、宿泊税の導入を含めた「財源を安定的に確保するための方策」の検討を慎重かつ、スピード感をもって進めていく。

「教育・福祉の充実」では、熱海版地域包括ケアシステム の構築に取り組み、地域のコミュニティにおいて重要な役割を果たす町内会への新たな支援制度を創設。また熱海版エンディングノートである「熱海だいだいノート」の次の展開として、身寄りの無い高齢者を対象に、生前の元気なうちに「終末期の治療」と「葬儀・埋葬」の希望を登録し、その希望に沿って履行する事業「(仮称)いきいきライフサポート事業」を創設。身寄りの無い高齢者には、身元保証がなくとも医療・介護サービスが着実に受けられよう、事業者向けのガイドラインを策定する。

「仕事・くらしの変革」では、観光産業の競争力強化へ向け、人材の確保や生産性の向上など、産業界と行政が連携して共通課題を整理。民間のシェアハウスも含めた従業員寮の整備などに取り組む。
熱海岡本ホテル跡地に市民ホールや図書館を整備する熱海フォーラム事業については、認定こども園の開設、学校施設の修繕、南熱海支所・南熱海出張所などの整備に一定の目途がたったことことから、年内に行政として原案を示し、4期目の任期期間中に着工する考へを明らかにした。
(熱海ネット新聞・松本洋二)

齋藤栄市長

齋藤栄市長の平成31年度施政方針演説(全掲)
1.はじめに
平成31年2月市議会定例会が開催されるにあたり、私の市政運営についての所信を述べさせていただくとともに、平成31年度の施策の概要を申し上げ、議員各位、並びに市民の皆様のご理解とご協力をいただきますよう、お願い申し上げます。

熱海躍進のための礎づくりに本格的に着手する年
回復から躍進へ。回復期を超えて、今後の本格的な熱海の発展を目指すために、私が四期目に掲げたテーマです。
このテーマに向け、この熱海において、経済の持続的発展と豊かな市民の暮らしを実現できる温泉観光地の全国モデルを創っていくため、「観光・経済の活性化」、「教育・福祉の充実」、「仕事・くらしの変革」の3つの柱からなる「熱海2030ビジョン」を昨年9月の所信表明において、お示ししたところであります。
この「熱海2030ビジョン」の下、平成31年度より、熱海躍進のための礎づくりに本格的に着手してまいります。
本年5月には、平成の次の時代が始まります。新たな時代に、この熱海が、明治維新の後、政財界の要人や文人墨客の保養地として発展した明治・大正、そして戦後の高度経済成長に伴って観光地として発展した昭和に続く、第三の成長期を迎え、更に発展していくためには、中長期的な視点での発展のための仕組みづくりが重要であり、まさにここ数年が正念場であります。
市民、産業界、議会、行政が一丸となって初めて、熱海における新たな時代を切り拓いていくことが可能となります。改めまして、市民、産業界、議員の皆様のご理解とご協力をお願い申し上げます。

2.平成31年度の重点施策
(1) 観光・経済の活性化
市民のくらしを豊かにする原資を稼ぐべく、さらなる観光・経済の活性化を図ってまいります。
①  観光地経営の仕組みづくり
熱海市は今、V字回復した温泉観光地として、全国から注目を集めるようになりました。この原動力である、市民の皆様、産業界の皆様のご尽力に改めて感謝を申し上げます。
これに気を緩めることなく、回復を遂げたと言われる今だからこそ、オール熱海で観光振興に取り組む協力体制をより強固にし、温泉観光地熱海が、持続的に発展していく仕組みづくりに注力してまいります。
まず、温泉観光地熱海として目指すべき方向性を市民、産業界、議会の皆様と共有するため、本年6月中を目途に、新たな観光基本計画を策定してまいります。現在、熱海市観光戦略会議の場において検討を進めており、「変化しつづける 温泉観光地 熱海」を基本理念とし、「首都圏 顧客支持率ナンバー1 温泉観光地熱海」を目指すべき姿として、今後、具体的な施策の検討を深めてまいります。
次に、観光戦略会議に設置した部会の下で、観光地経営の視点に立った舵取り役としての熱海型DMOの構築に向けた検討と、中長期的に観光振興に資する財源を安定的に確保するための方策の検討を慎重に、他方で、スピード感をもって進めてまいります。
②  静岡デスティネーションキャンペーン等を契機とした積極的な誘客施策と来遊客の満足度向上
本年4月から6月に、JRによる静岡デスティネーションキャンペーン、9月から11月にはラグビーワールドカップ、来年には、東京オリンピック・パラリンピックが開催されます。こうした貴重な機会を捉え、積極的にシティプロモーションや誘客施策を展開し、温泉観光地としての熱海をさらに確立していくことが重要です。
静岡デスティネーションキャンペーンに際しては、市域を越えた観光連携を推進するための第一歩として、熱海市と伊東市が協働し、JR東日本の協力も得ながら、QRコードを用いたスタンプラリーを実施し、両地域の来遊客の回遊性を高める取組を行ってまいります。加えて、熱海全地域の底上げをしていく観点から、各地域が創意工夫の下、取り組む積極的な誘客施策に対し、支援を行ってまいります。
「熱海国際映画祭」につきましては、国内外に熱海の名を発信するとともに、閑散期の誘客施策及びメディア・プロモーションの一環として大きな可能性を持っていることから、課題であった運営体制の見直し、効果的なPRに努めつつ、第2回の開催に向け取り組んでまいります。
観光ブランド・プロモーション事業につきましては、新年度から新たな3年間のスタートとなります。改めて熱海のブランドイメージを全国に訴求するため、新規顧客層、熱海再発見層双方へのプロモーションを強化するとともに、食の魅力アップ、市内回遊性の向上の仕組みづくりに注力してまいります。
世界的な国際観光客数の増加基調や国のビザ緩和等の受入環境整備の効果などにより、熱海市においても外国人観光客が増加していくことが見込まれることから、引き続き、公共施設への無料公衆無線LAN環境の整備や市内事業者が行うクレジット決済機器の導入支援など受入環境の充実を図ってまいります。
熱海港湾エリアは、本市の重要な観光資源の一つであります。一昨年度策定した「熱海港湾エリア賑わい創出整備計画」を踏まえつつ、県とも協議を進めながら、渚地区第4工区の早期完成に向けた要望活動も含め、熱海港湾エリアの賑わいの創出について取り組んでまいります。
初島への来遊客をお迎えする玄関口となる初島漁港交流広場の整備につきましては、昨年の台風12号による被害にかかる災害復旧事業を早急に完了し、休憩施設について、平成31年度中の完成を目指し、改めて建設に着手してまいります。
姫の沢公園につきましては、2020年度の供用開始を目指し、公園に親しむための拠点施設の整備に着手してまいります。
観光施設の整備に加え、歩いて楽しいまちづくりの形成に向け、検討を進めてまいります。具体的には、熱海駅・市役所周辺の中心市街地における来遊客の移動実態を把握すると共に、移動の円滑化や回遊性向上策を検討するなど、歩行空間の創出に向けて取り組んでまいります。
③  地域経済の活性化
これまでのリノベーションまちづくりの動きを受け、起業・創業を目指す方々の中で、熱海市なら何か面白いことが出来るのではないかと認識されはじめており、起業・創業の動きも出てきています。この動きを確実なものとするため、引き続き、地域の資源・空間・人材を活用するリノベーションまちづくりを起業・創業支援と一体で推進してまいります。同時に「ATAMI2030会議」を継続的に開催し、地域課題の共有、地域資源の掘り起こし、人材のマッチングの場として提供してまいります。
熱海商工会議所と連携して取り組んでいる熱海市チャレンジ応援センター(A-biz)は、平成29年11月にチーフアドバイザーが着任して以降、月間平均で80件を超える相談に応じ、リピート率も高く、多くの事業者にご利用頂いております。引き続き、起業・創業支援とも連携しつつ、事業者のチャレンジを応援し、「稼ぐ力」を引き出す経営支援を実施してまいります。
本年10月1日より予定されている消費税・地方消費税率の引き上げにともなう市民生活や市内経済への影響を注視してまいります。加えて、国により実施が予定されているプレミアム付商品券事業を適切に実施していくとともに、必要に応じ、経済対策に取り組んでまいります。なお、公共施設等の使用料につきましては、今般の消費税引き上げにあわせ、見直しをさせていただきます。

(2)教育・福祉の充実 
豊かな市民の暮らしを実現すべく、教育・福祉の充実を図ってまいります。
①  子育て・教育環境の充実
まず、安心して子どもを産み育てる環境の充実です。母子健康包括支援センター「すくすく」を中心に、出産、育児等の相談事業や、産後ケア事業、産婦健康診査などを実施するとともに、これらの事業を通じて、個々の母子の状況をきめ細かく把握し、必要な支援に的確につなげるなど、母子を支えるサービスを充実してまいります。
次に、就学前環境の充実です。就学前保育・教育の無償化につきましては、保護者等の負担軽減及び幼児教育の重要性の観点から、国の進める幼児教育の無償化に加え、その対象となっていない0歳児・1歳児・2歳児の乳幼児についても、待機児童が発生しないことを前提とした本市独自の無償化の実施に向け検討してまいります。
(仮称)あたみ認定こども園整備事業につきましては、第二小学校校舎を利用した幼児棟の完成に続けて、乳児棟としての小嵐保育園園舎改修を行ってまいります。さらに、2020年4月開園に向け、施設で行われる幼児教育・保育内容について、幼稚、保育の実務者を協議の中心として、認定こども園にかかる運営の方針を定めてまいります。
次に、児童生徒が安全に安心して過ごせる教育環境を確保するため、引き続き、学校施設等の修繕や学校のトイレの洋式化に注力してまいります。
また、児童の登下校における安全・安心の確保のため、地域における人的な見守り活動を補完する観点から、学校、地域、保護者、警察とともに緊急点検を実施した結果を踏まえ、通学路における防犯カメラの設置を進めてまいります。
教育施設の整備とともに、新学習指導要領への対応などに基づき、教育内容の充実についても並行して実施してまいります。
特に、英語教育につきましては、本市の独自事業として、英語教育の空白年次である小学校1・2年生にALTを新たに配置し、幼保から一貫して外国語に触れる環境を創ってまいります。中学校においては「読む・書く・聞く・話す」といった4つの技能について、生徒自らが、また、教員が指導上、必要となる英語力を把握できる民間検定を県下他の自治体に先駆けて、導入するなど充実を図ってまいります。
こうした教育内容の充実とともに、本市の子どもたちが5年後、10年後における社会情勢等に対応して生きていくことができる力を育成すること等を基本方針として、教育振興審議会における専門的なご議論も踏まえつつ、次期教育大綱・教育振興基本計画を策定してまいります。
また、児童生徒数の減少にともない、複式学級の増加や集団生活の重要性への対応のため、教育環境の整備を第一に、学校等の適正規模、適正配置について、学校等が地域におけるコミュニティの場であることをしっかりと考慮しつつ、計画の策定とともに対象となる校区における議論を開始してまいります。
② 熱海版地域包括ケアシステムの構築
2025年には後期高齢者の数がピークを迎え、また、2030年に向けては現役世代の人口が急速に減少してくことが予想されています。そうした状況を見据え、市民が共に支えあい、誰もが心身の状態にかかわらず、生涯を通じて生きがいを持ち、安心して暮らし続けられるまちを作るため、熱海版地域包括ケアシステムを構築してまいります。
第一のキーワードは「住民参加型」です。医療や介護の需要は今後も増え続ける一方で、担い手の確保は厳しさを増します。こうした中で、市民一人ひとりが健康づくり・介護予防に取り組むとともに、地域住民が相互に家事支援サービスの担い手として参画するなど、住民参加型の福祉を推進してまいります。
第二のキーワードは「自立生活の支援」です。医療介護分野の多職種が集う地域ケア会議を活用してケアプランの質の向上に取り組むことで、要介護状態の維持・改善につながる介護サービスの提供を目指してまいります。
これらの具体化に向け、まずは、市内にモデル地区を設定し、高齢者サロンと介護予防・保健事業のコラボレーション、住民主体の生活支援サービスの拡充、ケアプランの質の向上などに重点的に取り組んでまいります。
第三のキーワードは「尊厳の保持」です。要介護状態や認知症、障がいの有無にかかわらず、希望する限り在宅で暮らし続けられるよう、退院時の連携ルールの徹底などの医療介護連携に取り組んでまいります。
また、熱海版エンディングノートである「熱海だいだいノート」の次なる展開として、身寄りの無い高齢者を対象に、生前の元気なうちに「終末期の治療」と「葬儀・埋葬」の希望を登録し、その希望に沿って履行する事業、「(仮称)いきいきライフサポート事業」を創設してまいります。
さらに、身寄りの無い高齢者は、身元保証が確保できないために入院や介護施設への入所が円滑に進まないことがあります。身元保証がなくとも医療・介護サービスが着実に受けられるよう、事業者向けのガイドラインを策定してまいります。
第四のキーワードは「全世代・全対象型」です。地域包括ケアシステムは、高齢者のみならず、障がい者、若年の生活困窮者、子育て世帯など、福祉の各分野に通ずる考え方であります。その考え方を具現化していく第一歩として、熱海における障がい福祉の充実に向けた議論の場を設置し、相談支援事業の強化など、障がいがあっても熱海で暮らし続けられるサービスの整備につなげてまいります。
③ 健康寿命の延伸
市民の健康寿命の延伸は、本市の経済の持続的発展と豊かな市民の暮らしの前提となるものであり、平成31年度より本格的に取り組んでまいります。
特に、熱海版地域包括ケアシステム構築のモデル地区においては、保健師や栄養士などの専門職が高齢者サロンなどの介護予防の場を訪問し、健診の受診勧奨や保健指導、栄養指導などを行ってまいります。
また、特定健康診査の未受診者については、受診状況などを踏まえ電話や訪問等での受診勧奨を行うほか、追加健診の対象者を59歳から65歳に拡大するとともに、医療・介護・健診等のデータを活用しつつ、適切な対応が必要な方について、介護予防や保健事業、適切な医療・介護サービスなどにつなぐ取組を実施してまいります。

(3)仕事・くらしの変革
観光関連産業や地域コミュニティ活動など、市民生活の基盤を確保していくため、仕事・くらしの変革を図ってまいります。
① 観光関連産業の競争力強化に向けた検討
熱海の基幹産業である宿泊産業を中心とした観光関連産業が、働く場として選ばれる産業になり、産業としての競争力を高めていくことが、本市の経済の持続的な発展に不可欠です。
観光関連産業の競争力強化に向け、生産性の向上や制度改正が予定されている外国人労働者を含めた人材の確保等、産業としての共通課題を整理し、その対応策を検討していくため、産業界の多様な関係者と行政からなる議論・検討の場を創設し、産業界と行政が連携して課題に取り組んでいくための枠組みを構築してまいります。
②  地域コミュニティ活動の支援
地域のコミュニティにおいて、重要な役割を果たす町内会や、NPO団体などの市民が主体的に行動する団体では、近年高齢化が進み、加入者の減少や担い手不足等が生じています。これらの団体が抱える現状と課題を踏まえ、その課題解消に資する施策について、当該団体と協働しつつ、時間をかけて丁寧な検討を始めてまいります。その中では、町内会等の持続可能性を高める施策のみならず、市民と行政の役割を再定義し、超高齢化が進行する本市の状況を踏まえた地域コミュニティの再構築を目指してまいります。
平成31年度につきましては、町内会への新たな支援制度の創設や地域活動を担う個人・団体を対象とした「地域づくり人材育成」のための講習会を開催することなどにより、地域コミュニティ活動を支援してまいります。
③ 市民インフラの整備、市民・観光客の安全・安心の確保
平成30年度に引き続き、市民生活に不可欠な公共施設の改築・修繕等に集中的に取り組んでまいります。
南熱海支所・消防署南熱海出張所につきましては、本年10月の供用開始を目指し、整備を進めてまいります。
また、総合福祉センターにつきましては、市民の地域福祉活動の拠点とすべく館内改修を実施してまいります。
エコプラント姫の沢の施設の予防保全に努めるとともに、し尿処理事業につきましては、経済合理性の観点から、既存の下水道処理施設等を活用し、湯河原町、真鶴町との1市2町でのし尿等の処理を行うための施設整備を進めてまいります。
全国各地で多発する災害に備え、市民の安全・安心の確保に向けて積極的に取り組んでまいります。
消防団詰所は、地域の消防・防災拠点として重要な施設です。第1分団詰所等の修繕を行うとともに、老朽化が著しい第2分団詰所の新設工事に着手し、早期竣工に向けて事業を進めてまいります。
地震等によるブロック塀の倒壊事故を未然に防止するため、平成31年度から3年間、撤去や造り替える方に対し、費用の一部を補助する制度を大幅に拡充し、積極的にブロック塀の耐震化を促進してまいります。
市民の生命と財産を津波被害から守るため、津波対策の方針に基づき、県に対し、必要な防潮堤や水門の早期整備を要望していくとともに、市としても避難路の整備を含むソフト対策を引き続き講じてまいります。平成31年度は、初島地区・伊豆山地区において避難路の整備を実施してまいります。
また、大規模災害等の発生に備え、観光客の避難・誘導計画を策定し、市民と同様に観光客に対しても、円滑かつ迅速な避難・誘導と安全の確保を図ってまいります。
(仮称)熱海フォーラム整備事業につきましては、平成29年2月定例会において、事業の推進を一旦延期する旨を表明し、その後、認定こども園の開設、学校施設の修繕など、子育て、教育環境の充実のための施設整備、南熱海支所・消防署南熱海出張所などの公共サービスや消防・防災の拠点施設の整備など、より優先的に取り組むべき課題に注力をしてまいりました。
この2年の間に、これらの課題に着手するとともに、その取組に一定の目途がたったこと等を踏まえ、平成31年度から、私の四期目の任期中に着工すべく、事業の検討を再スタートします。
まずは、これまでの経過等も踏まえつつ、改めて(仮称)熱海フォーラム整備事業に関し、年内を目途に、行政としての原案を示すべく検討作業を進めてまいります。

3.各部門の主要施策
続きまして、平成31年度の主要施策について、部門毎に説明申し上げます。

(1) 経営企画部門
まず、経営企画部門についてです。
社会情勢の変化に応じながら公共施設の維持・更新等を適時・適切に実施するため、毎年度、公共施設個別施設アクションプランを見直し、着実に公共施設のマネジメントを推進してまいります。
また、現在実施している公共施設劣化状況調査の結果を踏まえて、各建物、設備の修繕計画や公共施設の再配置を含めた将来の改築・改修について検討を進めてまいります。
人材育成につきましては、市役所の最大の経営資源は職員であるという認識の下、引き続き、職員の専門知識を得るための派遣研修や、視野を広げ知識を深めるための先進地視察研修など、職員の能力の向上と意識改革に取り組んでまいります。
地方公務員法等が改正され、2020年度から臨時・非常勤職員の適正化及び会計年度任用職員制度の整備が求められていることから、その処遇等について検討していくとともに、職員一人ひとりが主体的に能力を発揮できる組織の確立や、職員が働きやすい職場環境の整備に取り組んでまいります。
広報情報につきましては、市民や来遊客が手軽に生活や観光、防災などの重要な情報を得ることができるよう、メールマガジンやSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)などによる情報発信の充実に取り組んでまいります。
また、基幹系システムが2021年に更新時期を迎えることから、市民等の情報を安全に管理運用し、財政負担の軽減、情報セキュリティや防災対策の向上が期待できる「自治体クラウド」の導入を周辺自治体と進めてまいります。
2020年度末で計画期間が終了する「第四次熱海市総合計画」につきましては、次期総合計画の策定に向け、市民の皆様のご意見をいただきながら、議論を進めてまいります。また、平成31年度末に計画期間が終了する「熱海市まち・ひと・しごと創生総合戦略」につきましても、国・県の総合戦略の動向を確認しつつ見直しを検討してまいります。
(2) 市民生活部門
次に、市民生活部門についてです。
本市でのマイナンバーカードの交付率は人口比で16%を超え、昨年10月から開始したコンビニ交付サービスの利用数も月平均40件を超えております。今後も、市民のマイナンバーカードの取得勧奨に努めるとともに、市民サービスの更なる向上に尽力してまいります。
平成30年度から財政運営が広域化された国民健康保険事業において、県内市町の住民の保険税負担の均等化についての検討が始まっておりますので、今後の動向を十分に注視してまいります。
市民協働につきましては、81町内会への防犯灯電気料補助のみならず、地域の課題解決や活動の推進に努力する町内会への支援制度を創設します。
また、全国でも先駆的な取組である、雑がみの回収事業につきましては、引き続き、市民、事業者の皆様と協働しながら進めてまいります。
防災・危機管理につきましては、大規模災害等の発生に備え、老朽化した同報無線子局の更新整備を行うとともに、防災ガイドブックを更新します。また、地震や風水害に対する知識を高めて地域防災力の強化を図ってまいります。
(3)観光経済部門
次に、観光経済部門についてです。
観光振興につきましては、観光ブランド・プロモーション事業を着実に進めるとともに、熱海型DMOの構築の動きとも連動しつつ、第3期「意外と熱海」プロジェクトを推進してまいります。
メディア・プロモーション事業につきましては、市民の皆様のご協力を得ながら進めるとともに、効果的なメディア露出を意識した取組を図ってまいります。
産業振興につきましては、国の地方創生推進交付金を活用し、静岡県が実施する、東京圏からのUIJターンの促進と地方の担い手不足対策として行うUIJターン希望者への創業・移住支援事業に本市も参加し、一定の要件の下、本市に移住し中小企業等に就職した方や本市で起業した方に対して、移住に要する費用などを補助してまいります。
農林水産振興につきましては、農地等への有害鳥獣の出没に対して、引き続き、被害防止に取り組むとともに、農地集積の推進、新規就農者の支援など農業基盤の整備を進めます。また、平成28年度から取り組んでいる自伐型林業につきましては、本格的に林業従事者として創業を目指す林業研修受講者の動きを支援するため、スキルアップ研修や創業のための諸手続きを行うための研修を実施してまいります。
(4)建設部門
次に、建設部門についてです。
急速に進む人口減少・少子高齢化を見据えたコンパクトシティの形成を目指すため、「立地適正化計画」の策定を2020年度の完成を目標に作業を進めてまいります。
市営住宅につきましては、長期的視点における予防保全の観点から定期的な修繕を行い、長寿命化を図ってまいります。また、民間による管理を推進するとともに、包括的な管理の手法を検討してまいります。さらに、市営住宅の役割、集約化、効率的な維持管理等を検討し、2020年度の「公営住宅長寿命化計画」の改訂を見据え、準備をしてまいります。
空き家対策につきましては、空き家実態調査の結果を活用し、中古物件を市場に流通させる仕組みを民間と連携しつつ模索してまいります。
建築物等の耐震化につきましては、引き続き、国や県をはじめ、関係団体等と連携しつつ、積極的に各種施策を展開してまいります。あわせて、地震発生時に建物倒壊による道路閉塞を未然に防止するため、緊急輸送ルート沿道建築物の耐震化に着手してまいります。
道路、橋梁などにつきましては、市民生活に身近な道路の利便性や安全性を高めるため、改良を積極的に進めていくとともに、これまで実施した点検結果と補修実績などを反映し、橋梁長寿命化修繕計画の見直しを行ってまいります。
公園等につきましては、梅園のウメやお宮緑地のジャカランダの台帳作成などによる基盤整備と、開花状況などの情報発信を進めることにより、花の名所の適正管理と利用者の満足度の向上に努めてまいります。
また、姫の沢公園、マリンスパあたみを含む熱海海浜公園及び市営駐車場につきましては、新たな指定管理者による管理運営の下で、施設の利便性の向上等に取り組んでまいります。
(5) 健康・福祉部門
次に、健康・福祉部門についてです。
高齢者福祉につきましては、在宅医療介護連携、認知症初期集中支援チームなどの事業を着実に実施してまいります。
生活習慣病対策につきましては、県内でも低い子宮頸がん検診・乳がん検診の受診率を向上させるため、未受診者に対し啓発ハガキにより受診を促してまいります。
糖尿病対策につきましては、医療関係職種と行政による「重症化予防に係る戦略会議」を立ち上げ、行政、主治医、専門医療機関等の連携の枠組みを検討します。
複合化・複雑化した福祉課題に着実に対応していくため、新たな理念と施策の体系の構築をすべく、第5次地域福祉計画の策定作業を進めてまいります。
子育て支援につきましては、教育・保育・子育て支援施策をさらに進め、地域全体で子育て家庭を支えることを基本としつつ、「熱海市子ども・子育て支援事業計画」第二期計画を策定いたします。
児童発達支援につきましては、国の制度に基づく熱海市児童発達支援センターを開設し、利用者の特性や発達段階に応じ、療育の場として専門的な支援を行ってまいります。
生活困窮者自立支援法に基づく事業につきましては、生活困窮者に対する第二のセーフティーネットとして機能が発揮されるよう、事業実施の周知をすすめ、必要な支援の推進に努めてまいります。
スポーツ振興につきましては、熱海市スポーツ推進計画の下、市民の健康増進、生涯スポーツの普及・推進を図ってまいります。
(6) 公営企業部門
次に、公営企業部門についてです。
公営企業三会計につきましては、ライフラインを担う事業として、効率的かつ安定的な事業運営に努め、安全・安心で豊かな市民生活の向上に寄与してまいります。
水道事業につきましては、安定した給水を継続するため、現在、施工中の和田木配水池築造工事を進めるとともに、災害や断水事故などの緊急時への対応として、給水車の配備を進めてまいります。また、県営駿豆水道につきましては、引き続き三島市、函南町とともに二市一町の足並みを揃えながら、今後を見据えた事業のあり方や料金につきまして、県企業局と協議を行ってまいります。
下水道事業につきましては、長寿命化計画に基づき、老朽化した浄水管理センター設備や管路の更新工事を進めるとともに、適切な維持管理を行ってまいります。
温泉事業につきましては、源泉施設の整備や、老朽化した送配湯管等の更新を進めつつ、経営状況と今後の収益の見通しを見定めながら、料金の改定につきまして検討を行ってまいります。
(7) 消防部門
次に、消防部門についてです。
新時代の消防体制に対応するため、高機能消防指令システムと消防救急デジタル無線を最大限に活用し、消防防災活動に取り組んでまいります。
消防力の要は人材です。若手職員の更なる知識、技術の向上のため、部内研修の充実を図り、外部派遣研修を積極的に行い、人材育成に努めてまいります。
火災予防対策につきましては、高齢者の安全確保を重点目標として、住宅用火災警報器の設置率の向上、維持管理の啓発に努めてまいります。
また、防火対象物への予防査察を強化し、宿泊施設の安心情報を発信するとともに、違反是正の徹底を通じ、火災の未然防止に努めてまいります。
救急体制につきましては、人口に対して高い水準で推移する救急需要に対し、救急業務の高度化に向け、救急救命士の育成、救急救命処置を行うことができる高規格救急自動車の更新整備をしてまいります。
また、外国人からの119番通報時及び救急現場の活動に対応するため、電話通訳センターを介した同時通訳による多言語対応システムを導入してまいります。
今後とも、地域防災の要である消防団との連携強化を図り、常備、非常備消防が一体となり、地域の安全・安心の確保に努めてまいります。
(8) 教育・文化部門
次に教育・文化部門についてです。
認定こども園開園に向けた緑ガ丘幼稚園・小嵐保育園からの転園につきましては、スムーズな移行が図られるよう周知等十分に配慮してまいります。
新学習指導要領の理解を深め、主体的・対話的な学びを重視し、授業改善に取り組んでまいります。
姫の沢自然の家廃止に伴う生徒・児童の野外活動への影響につきましては、その活動が縮小することがないよう対応してまいります。
児童・生徒適応指導教室につきましては、一人ひとりの状態に合わせた支援を行うため、その指導員を1名から2名に増員し、学校、保護者との連携を図ってまいります。
社会教育につきましては、市民の生涯学習活動がより充実したものとなるよう、学習機会の拡充に取り組むとともに、子育て支援の観点から家庭教育に対する支援にも努めてまいります。また、ここ数年の本市の外国人住民登録者数の増加傾向を踏まえ、多文化共生の観点から日本語教室等の質の向上を図ってまいります。
重要文化財の旧日向別邸につきましては、将来にわたって公開・活用を図っていくため、2021年度後半の完成を目指し、本年度より本格的に保存修理工事に着手してまいります。
江戸城石垣石丁場跡につきましては、学識経験者等で組織する調査・整備委員会において、平成31年度末を目途に「保存活用計画」の策定に取り組んでまいります。
起雲閣につきましては、今後とも持続的に開設していけるよう、施設修繕計画を策定してまいります。
(仮称)熱海文学館につきましては、外部の専門家を交えた設立準備委員会を発足し、杉本苑子先生のご遺志に添う文学館の開設を目指し、本格的な検討を進めてまいります。
市が所有する歴史・文化関係資料につきましては、状況把握と整理作業を進めるとともに、その保存・活用について検討を行ってまいります。
図書館につきましては、そのサービスの充実や運営のあり方について図書館協議会で議論を継続するとともに、電子書籍など新システム導入による利便性の向上について積極的に広報すること等を通じ、若年層の読書量の向上や市民の図書館利用の増加を図ってまいります。

4.むすびに
熱海は今、その発展の歴史上、大きな節目を迎えていると考えます。
平成の次の時代における熱海の躍進を実現するためには、市民、産業界、議会、そして行政がそれぞれ役割と責任を分かち合いながら、協働していくことが不可欠であります。
議員各位、並びに市民の皆様におかれましては、特段のご理解とご協力をいただきますようお願い申し上げ、私の施政方針といたします。

平成31年2月22日
熱海市長  齊 藤  栄

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