熱海のヒーローとして甲子園を沸かせた森厚太さん(27)が実家である熱海市の株式会社モリボーの常務に就任。家業を手伝うとともに、市内西部地区の街おこしイベントをスタートさせた。
第4回熱海ミニ四駆大会が2月24日、熱海市紅葉ガ丘町のモリボー駐車場で開かれ、市内の小学生約50人が自ら制作した自慢の愛車でレースを楽しんだ。会場には、モリボーのスタッフとともに運営を指揮する森厚太さんの姿があった。
「10年前、多くの熱海の人たちに甲子園に応援に来ていただき、大変勇気付けられた。その時の感謝の気持ちを込めて今回、ミニ四駆大会を手伝わせていただいた。熱海の西部地区はイベントが少ない。これからも社員とともに様々な企画を考えている」
過去、3回のミニ四駆大会は南熱海マリンホールなど南熱海で開催。熱海市街では初めて。ミニ四駆を通して子供たちのモノづくりの機会をつくる活動を続ける民間団体ATAMIロボテックファームを主宰する辻川一郎さんの「熱海市街でも開きたい」という申し出に会場を快く提供。子供たちが集まりやすいようにトン汁などを振る舞い、模擬店も用意した。
森さんは熱海中時代、裾野シニアに所属。名門・早稲田実業高校(東京)に進学し、1年生から四番ファーストを務めたスラッガー。2009年のセンバツに出場、ベスト8まで勝ち上がった。その際、熱海市民が熱海からバス6台で甲子園に応援に出向いた。この日のイベントには、その時のお礼の気持ちが込められている。
早実から早稲田大学に進み、東京六大学で活躍。卒業後は静岡銀行に就職し、5年間行員を務めた。そして昨年11月、退社して実家のモリボーに戻り、常務に就任。祖父で会長の重男さん(83)、父親で代表取締役の有光さん(55)の下で経営と建造物の改修工事全般を学んでいる。
森さんがイベントに意欲を示すのは、街の活性化とともに若者や女性に職人という仕事に興味を持ってもらい、工事会社を輝ける職場にする狙いも併せ持つ。
「少子高齢化が進み、うちの会社も40代、50代の職人が多い。古い建物の壁にアートペイントするなどのイベントに取り組むことで、若い人や女性にも塗装に興味を持っていただければ、雇用の創出や新たな分野の仕事にもつながる」
そんな森さんを応援しようと会場には静岡銀行の仲間7人が応援に駆けつけた。その一人、熱海市出身の露木拓郎さんは熱海中から静岡高校に進学して野球部主将を務め、明治大学を経て静岡銀行に入社。森さんとは昨年秋まで静岡銀行野球部で一緒にプレーした。
「森さんが熱海でイベントを開くというので、静岡からみんなで応援に来た。子供たちが目を輝かせ、スタッフがはつらつと切り盛りする姿を見て、熱海が元気なのが分かった。若い職人さんや女性が輝ける職場になると期待している」
熱海市では、官民協働で子育て世代の雇用創出に取り組んでいる。高齢化率(65歳以上人口)47%の熱海が労働力不足を解消し、持続可能な社会を目指すには、熱海を出ていった子供たちに熱海に戻ってもらうことが一番だと考えているのだ。
超大物打者・森さんの一振りが、回復から躍進へ転ずる熱海の起爆剤になることを期待する市民は多い。
(熱海ネット新聞・松本洋二)
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