同日程で2つの「熱海国際映画祭」 市が独自開催表明、実行委員会を排除

1カ月後に迫った第2回「熱海国際映画祭」の開催を巡って主催する実行委員会と熱海市が対立し、双方で別個に映画祭を開催する可能性が高まった。
齋藤栄市長は5月27日、市役所で開いた地元メディアとの定例会見で同映画祭の準備を進めてきた実行委員会の髪林孝司業務執行担当(フォーカス代表取締役)を解任するとともに、第2回「熱海国際映画祭」を熱海市独自の事業として開催する考えを示した。
6月28日〜7月1日までの日程は変えず、未公開作品のインターナショナル・コンペティション作品だけを上映し、招待映画やイベント等を削除。チケット販売も行わない方針。市観光課が実務を遂行する。

一方、髪林氏も同日、熱海市内の熱海ニューフジヤホテルで会見し、予定通り、実行委員会の主催で第2回「熱海国際映画祭」を開催する考えを明らかにした。
既に同実行委員会は84の国と地域から応募があった1234作品の審査を進め、多言語の最終ノミネート作品(約40作品)の翻訳作業や会場手配、企画イベントの契約を済ませている。熱海市に応募作品のコンテンツ等は渡さず、独自に映画祭を開催するという。
主催者及び実行委員(業務執行担当)を解任するには、実行委員会の決議が必要だが、会議は開かれておらず、市の決定には応じられないとし、一歩も引かない考え。逆に映画祭のメーンとなるコンペ作品や審査委員を抑えていることから強気。事実上、熱海市が独自で第2回を開催するのは難しい状況だ。

齋藤栄市長は自身の弁護士を介し、応募作品の市への移譲、実行委員会へ支援した500万円、文化庁の補助金(1250万円)の返却を求めているが、応じられないとしている。市独自の開催となれば、新たな補正予算を組む必要に迫られるが、「映画祭は市民生活とは別」と議会側は反発。承認を受けるのは難しい状況だ。
背景にあるのは、第1回同映画祭で出した約1465万円の赤字(残債896万円)。今のままでは「来年3月までの完済は難しい」「2回目も赤字を出しかねない」との市長の判断が、方向転換につながったと思われるが、実行委員会の同意を得ないまま強引に決断したことが混乱を招いている。
このままなら、同じ時期に実行委員会がインターナショナル・コンペティションの作品等を上映する熱海国際映画祭、市が独自の映画を集めた熱海国際映画祭の同期間の分立開催が予想される。さらに混乱が続けば、中止の可能性も出てきた。
(熱海ネット新聞・松本洋二)
■齋藤栄市長 5月15日に髪林氏が代表取締役を務めるフォーカス社が全債務を負い、市には迷惑をかけないという誓約書に署名、押印していたにもかかわらず、22日に髪林氏から660万円の支払いを求められた。市が支払わなければ、第2回の国際公募審査の選考通過作品を引き渡さないとなどと脅迫も受けた。私の弁護士とも相談し、解任を決めた。第2回熱海国際映画祭は実行委員会および髪林孝司業務執行担当(フォーカス代表取締役)を外し、熱海市の独自の事業で開催する。日程は変えず、赤字が出ないように他はゼロから見直す。
■髪林孝司熱海国際映画祭業務執行担当(フォーカス代表取締役) 金銭を求めたのは、22日に市から代表を退任するよう求められたからだ。このままでは、自社から拠出した資金の回収ができなくなる。1年前から1回目の後始末をしながら、2回目の準備をしてきた。人的にも金銭的にも多くを費やしており、予定を変えるつもりはない。しかも解任は実行委員会の決議ではなく、市長の独断。全く理解できない。契約の問題もあり、応募作品を市主催で上映することは不可能。映画界に与える影響が心配だ。
フロント写真=5月20日、市役所で開かれた熱海国際映画祭の記者会見

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コメント

    • 某映画祭関係者
    • 2019年 5月 28日

    市側もフォーカス側も酷いですね
    映画関係者の事を全く考えていない結果が1回目の失敗と今回のコレですよ
    両方とも運営能力も無ければ、映画祭ってものをわからずに利用しただけですね

    他で真面目に映画愛を持って映画祭を開いてる人たちにも本当に失礼ですよ両者ともに

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