東京都と熱海市の双方に住まいを持つ「二拠点生活」を続けながら、都内でモロッコ伝統の「フェズ刺繍(ししゅう)の刺し方を教えているアタマンチャック中山奈穂美さんが10月22日に開幕したアート博覧会「ATAMI ART EXPO(アートエキスポ) 2021」(起雲閣、〜24日)に自身の作品を展示している。
「フェズ刺繍」は、首都ラバトから東へ200キロにある、モロッコ最初のイスラム王朝の都フェズの伝統刺繍。中山さんは、東京の文化服装学院でデザインを学び、デザイナーとフォトグラファーの仕事をしていたが、39歳の時に開発途上国の国づくりに貢献できる人材を派遣する「青年海外協力隊」(独立行政法人国際協力機構、JICA)に応募。アフリカ大陸の最北端、スペインの対岸に位置するモロッコ王国に派遣され、砂漠で暮らす女性たちに洋裁を教え、地域発展に協力した。その一方で、同国旧王朝の格式あるフェズ刺繍も地元住民に伝えた。
「モロッコの砂漠地域ではフェズ刺繍を知らない女性も多く、フェズ刺繍を学習して生活が豊かになった人も多い。その経験を生かし、いまは日本で差し方を紹介している」と中山さん。帰国後、都内にフェズ刺繍教室を開設。現在も下多賀・山伏峠近くに工房「楓窯」を構える夫でカナダ人陶芸家のディビット・アタマンチャックさんと制作活動を続けながら、都内でフェズ刺繍の刺し方を教え、SNSで国内外に情報を発信している。
インターネットが普及したことで、モロッコの砂漠で暮らす女性たちをはじめ、国内外のフェズ刺繍愛好家が最先端の中山さんの作品に注目。モロッコ王国大使館も彼女の活動をして支援している。
アートエキスポを前に中山さんは「フェズ刺繍は美しい青が特徴。布目を数えながら直線だけで幾何学模様を刺し、表と裏に一度ずつ糸を通して表裏を全く同じように仕上げます。他の刺繍に比べ、時間と手間がかかるが、刺し方の基本を学べば、モチーフ1個の制作は約8時間でできる。刺繍好きな人はもちろん、そうでない人も手作りの良さを楽しんでいただけば」と話した。作品は起雲閣でご覧になってください。
(熱海ネット新聞)
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