【市政】「市民ホール&図書館」建設延期 2020年東京五輪後まで凍結

熱海市の斉藤栄市長は2月21日、旧熱海岡本ホテル跡地に多目的市民ホールや図書館などの複合施設を整備する「熱海フォーラム整備事業」計画を延期する考えを表明した。この日行われた熱海市議会2月定例会の平成29年度施政方針演説の中で「(熱海フォーラム整備)事業の推進を一旦延期させていただき、東京オリンピック・パラリンピック終了以降の着工を目指したい」と述べ、「認定こども園の開設、学校施設の修繕、南熱海支所・消防署南熱海出張所などの消防・防災の拠点施設の整備等を優先的に取り組む」と説明した。
熱海フォーラムをめぐっては、6月市議会で熱海読み聞かせの会から出された「熱海フォーラムに入る新しい図書館に入る図書館」の請願が採択され、市は当初予定していたPFI(民間資金活用による社会資本整備)方式の決定を見送っていた。その後、議会側と「公共施設の在り方」について協議を重ねてきたが難航し、市長はこのまま推進するのは困難と判断。資材の高騰もあり、五輪後への延期を決断した。
(熱海ネット新聞)

市長施政方針から抜粋
最後に、熱海フォーラム整備事業についてです。
「世代を超えて市民が集う場」としての熱海フォーラムを整備したいという想いは、当初から全く変わっておりません。
他方で、認定こども園の開設、学校施設の修繕等、子育て・教育環境の充実のための施設整備、また、南熱海支所・消防署南熱海出張所などの公共サービスや消防・防災の拠点施設の整備等、より優先的に取り組むべき課題が山積していることが公共施設等総合管理計画の策定過程において改めて明確になったことも事実であります。
こうした点も踏まえ、当面、子育て・教育環境の充実のための施設整備等、優先的に取り組むべき課題へ集中的に対応してまいります。
それに伴い、熱海フォーラム整備事業につきましては、これまで事業推進にご協力をいただいた皆様、ご期待をいただいている皆様には大変申し訳ありませんが、事業の推進を一旦延期させていただきたいと考えております。今後、課題への取り組み状況等も踏まえつつ、改めて議会や市民の皆様とともに、市民が集う場としての整備のあり方を検討し、東京オリンピック・パラリンピック終了以降の着工を目指してまいりたいと考えております。
私は、市政運営を担わせていただいた10年間で、財政再建を果たしつつ、新市庁舎や新生熱海中学校の建設等の大型プロジェクトを実現してまいりました。熱海フォーラム整備事業につきましても、必ず実現するべく、努力してまいりますので、ご理解のほどお願い申し上げます。
熱海市長 齊藤栄


熱海岡本ホテル跡地

平成29年2月市議会定例会市長施政方針・全文
1.はじめに
平成29年2月市議会定例会が開催されるにあたり、私の市政運営について所信を述べさせていただくとともに、平成29年度の施策の概要を申し上げ、議員各位、並びに市民の皆様のご理解とご協力をいただきますよう、お願い申し上げます。

(1)「住まうまち熱海づくり」を加速し、市民が変化を実感できる1年に

新しく生まれ変わる熱海「新生熱海」の実現に向け、「日本でナンバー1の温泉観光地づくり」、「住まうまち熱海づくり」、「市民のための市役所づくり」の3本柱に基づく市政運営も3年目を迎えます。
この間、宿泊客数は300万人を超え、まちの賑わいも増しつつありますが、他方で、少子高齢化の進展、若年層の転出、人口減少という長期的傾向は継続しております。
この傾向に歯止めをかけ、持続的な発展の軌道に乗るため、引き続き、商業・観光振興で原資を稼ぎながら、子育て・教育環境の充実や福祉の向上を通じ、市民の暮らしを豊かにしていく「住まうまち熱海づくり」を加速していく必要があります。
新生熱海の実現に向け、「住まうまち熱海づくり」を加速し、インフラ整備などのハード面、生活満足度の向上などのソフト面の両面で、市民の皆様が変化を実感できる1年となるよう全力を尽くしてまいります。

(2)市制施行80周年の節目の年

本年4月10日、本市は市制施行80周年を迎えます。第二次世界大戦、熱海大火、バブル経済の崩壊など幾多の困難を乗り越えて本市の今日の発展があります。80年の歴史を紡いでこられた多くの先達の方々の努力に改めて感謝を申し上げるとともに、市民の皆様とこの節目をお祝いしたいと思います。
市制80周年という節目は、これまでの熱海発展の歴史を振り返り、また、将来を展望する絶好の機会です。気持ちを新たに、「新生熱海」の実現に向け、尽力してまいります。
そして、後世の熱海市民にしっかりとバトンをつなげていくため、市民、産業界、議会、行政が一丸となって、本市の持続的発展の礎をともに築いていくことが重要であります。改めまして、市民、産業界、そして議員の皆様のご理解とご協力をお願い申し上げます。

2.平成29年度の重点施策

(1) 日本でナンバー1の温泉観光地づくり

① 当面の展望
平成28年は、市民の皆様、産業界の皆様のご尽力により、昨年に続き300万人を超える宿泊客をお迎えすることができました。しかしながら、平成24年からの増加傾向は踊り場にさしかかった状況にあります。
こうした厳しい状況の一方で、熱海・伊豆の玄関口である熱海駅舎・駅ビルの約90年ぶりの全面改修、MOA美術館のリニューアルが行われ、今後も大型宿泊施設のリニューアルオープンが予定されているなど、熱海に、民間による新たな投資が行われています。
また、市民の皆様、産業界そして行政が協力し合いながら取り組んでいるシティプロモーションや、熱海梅園の梅や糸川のあたみ桜など地域の資源を磨き、誘客につなげるという観光まちづくりが進展しつつあります。
今後、2019年ラグビーワールドカップ、2020年東京オリンピック・パラリンピックの開催、また、伊豆半島ジオパークの世界認定への再挑戦、JRデスティネーションキャンペーンの誘致など、周辺市町や静岡県と連携しながら、国内外に観光地熱海を発信するという貴重な機会を迎えようとしています。
これらの機会を積極的に活用しつつ、熱海にかかわる全ての方々の協力を得て、シティプロモーション、観光まちづくりに取り組み、本市の観光を更なる高みへと押し上げてまいります。

② 来遊客の満足度向上
今、熱海はここ十数年来で最も多くの観光客をお迎えしており、まさに今が何度も訪れて頂ける熱海ファンを獲得する好機です。そのためには、まち一丸となって、観光コンテンツやおもてなしの心を磨くとともに、マーケティングに基づくプロモーションを行い、来遊客の満足度の向上を図っていく必要があります。
まず、平成29年度も、市民の皆様や産業界と行政が役割分担をしつつ、しっかりと連携を図ることを基本として、シティプロモーションと観光まちづくりを同時に推進してまいります。
観光ブランド・プロモーション事業につきましては、特に「食の魅力アップ」、「夜の賑わいづくり」、「インバウンドの推進」につながるプロモーションを強化し、滞在時間の延長、観光消費額の増加を図ってまいります。
また、本年6月には、ジャカランダサミットの開催を予定しております。サミットの本市開催を契機に、宮崎県日南市、長崎県雲仙市とともに世界三大花木であるジャカランダのプロモーションを強化し、熱海梅園の梅、糸川のあたみ桜に並ぶ熱海の魅力として発信してまいります。
さらに、近年のクルーズ客船需要の高まりを踏まえ、クルーズ客船誘致を更に拡大するべく、官民からなるクルーズ船誘致委員会を創設し、誘致活動を強化するとともに、クルーズ客船誘致を核とした港湾エリア全体の将来像の調査・検討に着手し、港湾エリアの整備促進につなげてまいります。
本市におきましても訪日外国人観光客は年々増加しており、日本全体の目標値2020年4千万人を見据えつつ、訪日外国人観光客の受入環境の整備を加速する必要があります。具体的には、梅園などの公共施設への無料公衆無線LAN環境の整備、民間施設が実施する無料Wi-Fiスポットの整備、飲食店におけるトイレの洋式化、パンフレット・ホームページの多言語化の充実などを推進してまいります。また、高齢者、障がい者や訪日外国人など多様化するお客様への対応力を高めるユニバーサルマナー研修を実施し、産業界及び行政のホスピタリティの向上・満足度の向上に努めてまいります。
熱海に存在する多くの別荘を訪れる来遊客もまた日々訪れる観光客と同様に本市の大事なお客様です。こうした別荘等所有者のニーズをしっかりと把握し、適時に情報を発信することを目的として、熱海型別荘コンシェルジュを創設します。別荘等所有者のためのワンストップサービスを提供し、熱海での滞在時の満足度を高め、来訪頻度の向上を図ってまいります。

③ 経営支援の強化、新たな産業・働き方・暮らし方の創造
本市では、基幹産業である観光関連産業を中心として、人手不足の状況が続いております。引き続き、静岡労働局とも連携しながら、ミスマッチの解消と人材の確保に向けた取り組みを進めるとともに、観光関連産業におけるワークシェアリングなど、働き方についても検討してまいります。
現在、地域経済活性化のため熱海商工会議所と連携して取り組んでいる熱海市チャレンジ応援センター、A-bizに専属のアドバイザーを設置するなどの機能強化を図り、本市の基幹産業である観光関連産業を中心に経営支援を強化してまいります。
同時に、平成28年度から地方創生加速化交付金を活用し取り組んでいる創業支援、地域資源を活用するリノベーションまちづくりを引き続き推進し、新たなビジネスに取り組みやすい環境の整備と若年層を中心とした本市での創業・地域への定着を支援してまいります。また、この取り組みの一環として、本市の山林という未活用の地域資源を活用し、新たな就労機会を創出するとともに、自然環境の保護、再生可能エネルギーへの転換を促進するため、自伐型林業も推進してまいります。

(2) 住まうまち熱海づくり

① 子育て・教育環境の充実
本市の課題である少子高齢化、それに伴う人口減少に歯止めをかけるためには、観光・商業振興により豊かになるための原資をしっかりと稼ぎ、その稼いだ原資を活用し、子育て世代や高齢者の皆様の暮らしを豊かにする「住まうまち熱海づくり」の諸施策を加速していく必要があります。
まず、安心して子どもを産み育てる環境の充実を図ってまいります。
具体的には、専任の保健師による相談窓口として、保健センター内に母子保健型子育て世代包括支援センター「熱海版ネウボラ」を創設します。これにより、保健師が妊娠期から出産、小学校就学前までの様々な相談に応じる体制を整備してまいります。加えて、助産師による出産や母乳・育児に関する相談会を月に1度開催するとともに、生後2ヶ月から5ヶ月までの第1子を育児中の母親を対象に、心理相談員による育児の基本的な知識を学ぶ教室を実施し、妊娠・出産及び子育てに関する不安の軽減に努めてまいります。
また、出産後の一定期間、家族等の支援を得ることが難しく、専門職による支援が必要な母子を対象に、産科医療機関を利用した宿泊や日帰りによる支援を行ってまいります。さらに、市内のホテル等において骨盤ケアや助産師の助言を受けられる産後ケア事業を試行的に実施してまいります。
これに加え、不妊治療助成制度を拡充し、経済的負担の軽減を図ってまいります。
次に、認定こども園や専門的な療育環境の整備など、就学前施設の充実を図ってまいります。
まず、認定こども園につきましては、施設の老朽化が課題であった緑ガ丘幼稚園と小嵐保育園への対応とともに、良質な就学前教育や利便性の高い保育の双方を総合的に提供するため、幼保連携型認定こども園の整備に向け検討を進めてまいりました。当初、来宮駅前駐車場用地を候補地として検討しておりましたが、地域コミュニティの核である学校施設との連携、既存施設を有効に活用する公共施設マネジメントの考え方などを踏まえ、小嵐保育園園舎及び第二小学校の地階に設置する方針で整備事業を進めてまいります。
具体的には、小嵐保育園園舎については、園舎の耐震補強及び大規模改修により、0歳から2歳児の保育を行い、第二小学校の地階については3歳から5歳児の保育を行います。平成29年度に園舎等の耐震設計及び基本設計、実施設計を予定し、これらの詳細設計が完了した後に改修工事を進め、平成31年度中頃を完成の目途として事業を進めてまいります。
認定こども園の整備に加え、保育需要の増加に的確に対応するとともに、入園希望に沿えず待機をされている児童の解消に向け、現在、熱海駅周辺での小規模保育所の開設を検討しております。今後、検討を加速し、準備が整った段階で、速やかに関連予算を議会へ提出いたします。
就学前の発達に課題や遅れの不安を持つ子どもの専門的な療育環境の提供を目的とした「IPPOあじろ園」は、昨年2月のオープン時から利用者が大幅に増加しております。今後も利用者の増加が見込まれることから、新たに保育室を整備するとともに、発達に課題や遅れの不安を持つ子の保護者への相談支援を強化してまいります。
次に、園児・児童・生徒が、安心して過ごせる教育環境を確保するため、学校施設の修繕に重点的に投資してまいります。
平成29年度につきましては、まず、雨漏りのひどい初島小中学校校舎屋根及び外壁の改修、多賀小学校校舎及び多賀中学校校舎の屋上防水改修並びに泉幼稚園園舎の外壁改修を行ってまいります。今後も「学校施設の適正規模・適正配置計画」も参考にしつつ、学校等施設の修繕を計画的に進めてまいります。
放課後児童健全育成事業、いわゆる放課後児童クラブにつきましては、市内6箇所ある公設民営のクラブにおいて、平日18時までの預かり時間の延長、及び土曜日の預かりの開始など事業の充実を図ってまいります。なお、時間延長・土曜日開設に伴い、預かり時間に応じた利用料設定を導入するとともに、一部のクラブでは利用料の負担増となる場合が生じますが、引き続き、事業の適正化や一層の充実を図るべく努めてまいります。
さらに、小学校での英語学習の低年齢化にいち早く対応していくとともに、外国語教育が本市の特色の一つとなるよう、ALTを2名増員し、7名体制とします。これにより、本市の保育園、幼稚園、小学校、中学校で、ネイティブによる効果的な英会話学習を更に進めてまいります。

② 高齢者・障がい者福祉の向上
まず、検討を行っていた敬老大会につきましては、町内会や老人クラブが実施する敬老行事に際し、その経費を補助することを通じ、各地域における高齢者を敬い、感謝する活動を支援してまいります。
次に、住み慣れた地域で安心して暮らし続けることができるよう熱海版地域包括ケアを構築すべく検討に着手してまいります。平成29年度につきましては、職員を中心にチームを組織し、地域をまわり、高齢者の生の声を集め、生活実態の把握、ニーズや課題を掘り起こすとともに、支援のあり方などについて関係者と検討を重ねてまいります。
昨年5月から、試行的に開始した高齢者等外出支援バス事業につきましては、利用が低調だったことを踏まえ、利用者等の声を伺い、本年1月末にバスの運行便数、途中下車など、利便性を向上させる見直しを行いました。本年3月末で試行運行は終了しますが、事業見直し後の状況も踏まえつつ、引き続き、移動の利便性の向上に向け、交通事業者等と検討を深めてまいります。
障がい者福祉につきましては、市内の障がい者施設、熱海市ホテル旅館協同組合連合会と協働して、ホテル・旅館の業務を障がい者が適応しやすいよう最適化するとともに、働きたい障がい者とホテル・旅館のマッチングを支援するモデル事業を実施してまいります。このような取り組みを通じ、障がい者の働く機会の充実を図ってまいります。

③ 公共サービス、生活インフラ等への投資
公共の施設やサービスは市民生活にとって不可欠な存在です。老朽化が進んだ公共施設の改築・修繕等に積極的に取り組み、市民の利便性の向上や安全・安心の確保に努めてまいります。
まず、南熱海支所・消防署南熱海出張所につきましては、築後50年が経過し老朽化が著しいことなど、早急な対策が必要な状況にあります。そのため、現在地に津波への対策を講じた上で、建て替えることを基本として、地域の行政水準の確保と消防・防災の拠点としての機能の維持に向けた整備を進めてまいります。今後、構造や工法について技術面の検討を深め、市民の皆様の不便や不安を最小限に留めるよう工夫しつつ、できる限り速やかに整備を行ってまいります。
故人とご遺族、会葬者の皆様がともに過ごす大切な場であります火葬場につきましては、建物の老朽化や利用者の高齢化に対応した、誰にでも優しい施設となるよう、1階多目的室、2階待合室等施設の全面的なリニューアルを実施してまいります。
また、平成30年度から、マイナンバーカードを利用したコンビニ交付サービスを開始すべく、準備作業を開始してまいります。住民票や印鑑登録証明書、戸籍証明書、各種税証明等を、コンビニエンスストアでも取得可能とし、市民の皆様が利用される各種証明手続きの利便性の向上を図ってまいります。
次に、安全・安心の確保に向けた施設、インフラの整備です。
消防団詰所は、地域の消防・防災拠点として重要な施設であります。老朽化が著しく津波浸水想定区域に立地している初島消防団第9分団詰所につきましては平成29年度中の竣工に向け建設を進めてまいります。
また、耐震性能の劣る西部地区消防団第3分団詰所につきましては、新築移転に向けた設計を実施するとともに、早期竣工に向けて事業を進めてまいります。
津波避難路の整備も進めてまいります。現在、第4次地震被害想定を踏まえ、津波対策協議会が各地域で開催されています。避難路を含むソフト対策の本格的な整備は、協議会の結論を踏まえつつ実施してまいりますが、平成29年度は、網代地区等について先行的に避難路の整備を実施してまいります。
最後に、熱海フォーラム整備事業についてです。
「世代を超えて市民が集う場」としての熱海フォーラムを整備したいという想いは、当初から全く変わっておりません。
他方で、認定こども園の開設、学校施設の修繕等、子育て・教育環境の充実のための施設整備、また、南熱海支所・消防署南熱海出張所などの公共サービスや消防・防災の拠点施設の整備等、より優先的に取り組むべき課題が山積していることが公共施設等総合管理計画の策定過程において改めて明確になったことも事実であります。
こうした点も踏まえ、当面、子育て・教育環境の充実のための施設整備等、優先的に取り組むべき課題へ集中的に対応してまいります。
それに伴い、熱海フォーラム整備事業につきましては、これまで事業推進にご協力をいただいた皆様、ご期待をいただいている皆様には大変申し訳ありませんが、事業の推進を一旦延期させていただきたいと考えております。今後、課題への取り組み状況等も踏まえつつ、改めて議会や市民の皆様とともに、市民が集う場としての整備のあり方を検討し、東京オリンピック・パラリンピック終了以降の着工を目指してまいりたいと考えております。
私は、市政運営を担わせていただいた10年間で、財政再建を果たしつつ、新市庁舎や新生熱海中学校の建設等の大型プロジェクトを実現してまいりました。熱海フォーラム整備事業につきましても、必ず実現するべく、努力してまいりますので、ご理解のほどお願い申し上げます。

3.各部門の主要施策

続きまして、平成29年度の主要施策について、部門毎に説明申し上げます。

(1) 経営企画部門

まず、経営企画部門についてです。
市役所の最大の経営資源は職員であるという認識の下、専門知識を得るための派遣研修、視野を広げ知識を深めるための先進地視察研修などを通じ人材育成に取り組み、職員の意識と能力の向上に努めてまいります。また、非正規職員の賃金等の処遇改善を図ってまいります。
昨年発生した職員の不祥事につきましては、市役所一丸となり再発防止に全力で取り組んでいくとともに、業務の改善等に取り組み、職員が働きやすい環境を構築してまいります。
本年4月には、ホームページをリニューアルし、市民や観光客の皆様にわかりやすく情報を伝えていくとともに、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を活用した情報発信も強化してまいります。
公共施設マネジメントにつきましては、パブリックコメント等を踏まえ策定する「公共施設等総合管理計画」の方針に基づき、選択と集中による施設の適正化、適切な維持管理、修繕、更新等の推進に取り組んでまいります。

(2) 市民生活部門

次に、市民生活部門についてです。
国民健康保険制度につきましては、平成30年度から、制度の安定化のため、都道府県が財政運営の責任主体となり、国民健康保険事業の中心的な役割を担う、いわゆる広域化が実施されます。広域化に向け、県と連携し、的確に対応してまいります。
エコ・プラント姫の沢につきましては、平成27年度から4年間の集中的な保全工事の3年目となります。施設の機能回復と延命化を図り、将来的にも安定した運転を継続していくため、引き続き保全工事を実施してまいります。
市民生活に欠くことのできない し尿処理施設の整備につきましては、莫大な資金を投じる施設の建設はせず、効率的で将来的にも負担が少ない方法で し尿処理を行うことを前提に、湯河原町、真鶴町と情報を共有し、早期に最善の方法を見出し、安定的な処理を実現してまいります。
市民協働につきましては、市民参画・協働によるまちづくりを推進するため、NPO・ボランティア団体を対象とする講座を開催するなど、団体の育成・活動支援を行うとともに、環境問題、消費者問題、男女共同参画などの課題に取り組む団体や町内会長連合会など地域の団体と引き続き連携してまいります。
防災・危機管理につきましては、市役所第一庁舎にエフエム熱海湯河原のアンテナ設備を設置し、有事の際に、災害対策本部からの迅速・的確な情報発信が可能となるよう設備を充実してまいります。
また、ゲリラ豪雨等の風水害に対する知識を高め、地域防災力の強化を図るなど、防災・減災への取り組みを積極的に進めてまいります。

(3) 観光経済部門

次に、観光経済部門についてです。
観光振興につきましては、観光ブランド・プロモーション事業を着実に進めることに加え、市民の皆様のご協力を得ながらメディア・プロモーション事業を強化してまいります。
また、静岡県全体のDMO組織となる「しずおかツーリズムビューロー」及び伊豆地域の「美しい伊豆創造センター」と連携しながら広域観光・インバウンド観光を進めるとともに、観光地経営の体制の構築に向けて取り組んでまいります。さらに、次期「熱海市観光基本計画」の検討を進め、持続可能な観光地経営に向けた方向性を定めてまいります。
産業振興につきましては、熱海市チャレンジ応援センター、A-bizを中心に、個店の経営支援及び創業支援を一体的に進め、まちの賑わい創出を図ってまいります。また、市内経済の要となる熱海商工会議所会館の耐震補強を支援してまいります。
農林水産振興につきましては、農地等への有害鳥獣の出没に対して、市民への被害防止の取り組みを強化してまいります。初島漁港交流広場整備事業につきましては、平成31年度当初の供用開始を目指し、引き続き施設整備工事を進めるとともに、完成後の施設管理等について地元の皆様と相談しながら方針を定めてまいります。

(4) 建設部門

次に、建設部門についてです。
都市計画の総合的な指針としての役割を果たす「都市計画マスタープラン」につきましては、平成29年度中の改訂に向け、引き続き検討を進めてまいります。
市営住宅につきましては、効率的・効果的な機能更新を進めるとともに、用途廃止した市営住宅については適切に解体を進めてまいります。また、長期的な視点から市営住宅の役割、集約化、効率的な維持管理等を検討し、「公営住宅長寿命化計画」を見直してまいります。
空き家対策につきましては、昨年度から実施している空き家実態調査を基に、本市の空き家に対する基本的な取り組み姿勢や今後の対策を検討し、「熱海市空き家等対策計画」を策定してまいります。
耐震化の促進につきましては、引き続き国や県をはじめ、関係団体等との連携による啓発活動など、積極的に各種施策の展開を図り、建築物の耐震化を効果的に推進してまいります。
道路、橋梁などにつきましては、市単独道路改良工事に係る予算を大幅に増額し、市民生活に身近な道路の改良を積極的に進めてまいります。あわせて、定期的な見回り点検を実施しながら、道路、橋梁の補修を実施していくとともに、橋梁の長寿命化や耐震化工事などを計画的に進めてまいります。
公園につきましては、マリンホールの観覧席の修繕等、施設修繕を実施していくとともに、泉公園に新たに遊具を設置する等、利用者満足度の向上、癒しの空間となる公園づくりを進めてまいります。また、梅園につきましては、香林亭の改修に向けた検討等、更なる魅力の向上に向けて取り組んでまいります。

(5) 健康・福祉部門

次に、健康・福祉部門についてです。
高齢者介護につきましては、心身の機能低下により介護予防・生活支援が必要な方、要支援認定を受けた方などを対象として、訪問型・通所型サービスなどを提供する「介護予防・日常生活支援総合事業」の運用を開始してまいります。また、生活支援サービスを必要とする方と、地域ボランティアなどのサービス提供の担い手とをつなげる「生活支援コーディネーター」の配置に向けた取り組みを推進すること等により、高齢者の方々の在宅生活を支える仕組みづくりに努めてまいります。
また、総合福祉センターにつきましては、高齢者の交流や休憩場所となっている3階多目的ホールの床カーペットの張替え等、施設・設備の機能回復に向けて、引き続き取り組んでまいります。
生活習慣病対策につきましては、平成28年度から、特定健康診査の自己負担額を一律500円とし、胸部検診と大腸がん検診と同時に受診できる体制を整備いたしました。その結果、大腸がん検診において大幅に受診率が向上したことを踏まえ、引き続き、同様の取り組みを進めつつ、更なる受診勧奨に努めてまいります。
スポーツ振興につきましては、選手の育成強化を図るため、市内の小学生から高校生を対象に、東海大会以上に出場した優れたスポーツ選手等に対し、遠征に伴う交通費や宿泊費の一部を補助する制度を創設し、経済的負担を軽減してまいります。

(6) 公営企業部門

次に、公営企業部門についてです。
公営企業三会計につきましては、ライフラインを担う事業として、適正かつ効率的な経営に努めていくとともに、中長期的な経営の基本計画、いわゆる「経営戦略」の策定に取り組んでまいります。
水道事業につきましては、安定した給水を継続させるため、現在、施工中の来宮配水池及び、土橋配水池の築造工事を進めるとともに、老朽管等の更新工事に取り組んでまいります。なお、県営駿豆水道につきましては、引き続き三島市、函南町とともに、二市一町の歩調を合わせながら、県企業局に対し、受水費削減に向け、適正な料金設定を求めてまいります。
下水道事業につきましては、早期経営健全化を目指し使用料金の改定や、費用・人員の削減に取り組んでまいりました。その結果、平成29年度末には一時借入金の完済の目途が立ち、地方財政法に基づく実質資金不足額及び資金不足比率が解消される見込みとなりました。今後は、経営の安定化を図りつつ、長寿命化計画に基づき老朽化した浄水管理センター設備や管路の更新工事を進めるとともに、適切な維持管理を行ってまいります。また、普及促進事業を推進し、面整備済区域内の接続率、普及率の向上、公衆衛生の向上、そして公共用水域の保全に努めてまいります。
温泉事業につきましては、所有源泉施設の整備や、老朽化した貯湯槽及び送配湯管等の改修・更新を進め、引き続き安定給湯に努めてまいります。

(7) 消防部門

次に、消防部門についてです。
新時代の消防体制に対応すべく整備が完了した高機能消防指令システムと消防救急デジタル無線を最大限に活用し、消防防災活動に取り組んでまいります。
消防力の要は人材です。引き続き、インターンシップやリクルート活動などを通じて優秀な人材の確保に努めるとともに、外部派遣研修を含めた研修を積極的に行い、世代交代に伴う人材育成に努めてまいります。
火災予防対策につきましては、高齢者の安全確保を重点目標として、住宅用火災警報器の設置率の向上、維持管理の啓発に努めてまいります。
また、防火対象物への予防査察を強化し、宿泊施設の安心情報を発信するとともに、違反是正の徹底を通じ、火災の未然防止に努めてまいります。
救急体制につきましては、人口10万人都市に匹敵する救急需要に対し、救急救命士の育成に努め、メディカルコントロール協議会との連携のもと救急業務の高度化推進へ、引き続き取り組んでまいります。
今後とも、地域防災の要である消防団との連携強化を図り、常備、非常備消防が一体となり、地域の安全・安心の確保に努めてまいります。

(8) 教育・文化部門

次に、教育・文化部門についてです。
次代を担う子どもたちが郷土を愛し、誇りを持ち、心豊かに、たくましく成長していく教育を進めていくとともに、高齢者を始めとする市民の皆様が、いつでも、どこでも学ぶことができる生涯学習社会の確立を目指して施策を進めてまいります。
就学前教育につきましては、認定こども園及び小規模保育所の開設に力を注いでいくとともに、地方裁量型認定こども園として、新たに出発するMOAあたみ幼児学園の運営を支援し、保育の機会を充実させるよう努めてまいります。
引き続き、保育士や幼稚園教諭の確保に向けて取り組んでいくとともに、「ことばの教室」へのニーズが高まっている状況を踏まえ、指導者を1名増員し、3名体制とし、言語聴覚士や臨床心理士など専門職の確保や活用に努めてまいります。
学校教育につきましては、教職員の多忙化の解消のためにICTを活用したシステムの構築を早急に進めてまいります。
また、中学校の部活動に対しての助成制度を創設し、部活動に関する保護者の負担を軽減してまいります。
社会教育につきましては、多様化するニーズに応じられるように、学習機会の拡充や場所の提供に取り組み、市民の生涯学習活動の一層の充実を図ってまいります。
文化財の保存活用につきましては、江戸城石垣石丁場遺跡の保存活用計画の策定に向けて、採石跡などの遺構の把握、確認のための測量調査を進めてまいります。
また、平成29年度は、熱海の名を全国に広める契機となった「金色夜叉」の作者である尾崎紅葉氏の生誕から150年を迎える年となります。これを機に改めて「金色夜叉」への理解を深めるとともに、積極的な情報発信を行い、熱海の魅力の一つとして誘客にもつなげるべく、生誕150周年記念事業に取り組んでまいります。
文化施設につきましては、多くのお客様をお迎えしている起雲閣の電気設備等の修繕を集中的に進めてまいります。
図書館につきましては、新たに図書館協議会を設置し、現図書館のサービスの充実、市民の利便性向上に向けた議論を開始いたします。
また、市制施行80周年記念事業として編さんされた「熱海温泉誌」が4月10日に刊行いたします。改めて、刊行に向けてご尽力いただいた皆様に感謝申し上げるとともに、この偉大な成果を、熱海温泉の歴史を、市民の皆様のみならず、全国に向けて積極的に発信してまいります。

4.むすびに
市制施行80周年の節目を迎え、この熱海の新たな歴史を紡いでいくことが現在を生きる我々の使命です。そして、太く強固な歴史を紡いでいくためには、市民、産業界、議会、そして行政がそれぞれ役割と責任を分かち合いながら、市の運営に参画し、協働していくことが不可欠であります。
議員各位、並びに市民の皆様におかれましては、「新生熱海」の実現に向け、特段のご理解とご協力をいただきますようお願い申し上げ、私の施政方針といたします。

平成29年2月21日

熱海市長  齊 藤  栄

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  2. 2023-8-21

    被災地を照らす大輪の花火 伊豆山港で海上花火大会

    熱海市の伊豆山港で8月20日、伊豆山温泉海上花火大会が開催された。午後8時20分から35分ま…
  3. 2023-8-17

    お盆の夜焦がす網代温泉海上花火大会 去り行く夏惜しむ

    熱海市の網代湾で8月16日午後8時30分から、網代温泉海上花火大会(同温泉観光協会主催)が開…
  4. 2023-8-17

    熱海市で「百八体流灯祭•送り火」長浜海岸に110基のかがり火

    熱海市のお盆の伝統行事「百八体流灯祭」(多賀観光協会主催)が8月16日夜、多賀地区の長浜海岸…
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