熱海市は8月23日、これからのまちづくりを考える第2回「ATAMI2030会議」(主催・熱海リノベーションまちづくり実行委委員会)を市内銀座町のnaedocoで開催した。今回のテーマは「『現代』と公共空間」。古い建物や空き地を再生させ、Webサイト「東京R不動産」で紹介している設計事務所OpenA代表の馬場正尊さんが「熱海の公共空間の新たな活用法」について講演。齊藤栄市長、森本要副市長をはじめ、およそ100人が熱心に聞き入った。
「みなさん、公共空間は自分たちのものではなく、管理する行政のものだと思っていませんか?」と問いかけた馬場さんは「あの空間は僕らの税金で管理されている。行政の所有物ではなく、私たちのものです」と持論を展開した。
「秩序を保つ必要性から行政が一生懸命に管理しているが、行政の人たちも民間や市民がちゃんとしたルールを作り、遵守していけば、民間が使ってもいいと考えている。規制も多いが、これは条例で変えられる部分が多い。熱海は海沿いの道路、ビーチ、通路など、稼ぎどころは満載」と公共空間の新たな活用を推奨した。
■お手本はNYブライアントパーク
馬場さんが特に力を込めたのは公園。ニューヨーク市のオフィス街にあるブライアントパークの事例を紹介し、ここでは公園内にアウトドア図書館のほか、卓球台や昼食をとるテーブルやイスが並び、通行人や観光客が休憩する場になっているという。
また同氏が公園運営会社を作り、今年から手がけた東京・豊島区の南池袋公園では、毎月第3週の土日にマルシェを開催するほか、野外映画を楽しむことも出来る。お父さんが子供たちを遊ばせながら、無線ランを使ってパソコンで仕事をする姿も増えているという。
「公共の公園に企業の協賛を募っていいのか、という意見もあるが、ブライアントパークのように公園にスポンサー(アパレルメーカーのZARA)を付けて充実させ、公園で上がった収益を公園に還元する手法もある。熱海の公共空間も新たな活用の社会実験が必要だ」と強く訴えた。
■熱海岡本ホテル跡地に暫定公園案浮上
齊藤市長は今年2月議会で、熱海岡本ホテル跡地に市民ホールや図書館などの複合施設を整備する「熱海フォーラム事業」について、着工を2020年東京オリンピック・パラリンピック終了以降に延期する考えを表明した。その一方で、公共空間の同跡地を「社会実験」として来年度から広場として暫定使用する準備を進めている。今回の「ATAMI2030会議」の討議は、その流れに沿うものだ。
同会議の一環として計画された市営渚駐車場の14台分のスペースをつぶして実施予定のキャンピングカー事業は、地元住人や商工業者の猛反対で計画の見直しを迫られている。暫定とは言え、熱海岡本ホテル跡地に公園が出来れば、この問題も解決する。“熱海を変える”と意気込む事業者のみならず、エールを送る市民は多い。
(熱海ネット新聞・松本洋二)
◆立見修司熱海市観光経済課長 熱海の公共空間の活用法は無限にあり、今回の論議をこれからのまちづくりにつなげたい。夏の繁忙期が終わり、今後は閑散期対策なども加味して公共空間を考える必要がある。
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