この風景を見ていて高校生の頃に読んだ一冊の本を思い出した。森村桂さんが著した「天国にいちばん近い島」。子供のころに亡き父から聞いた「1年中花が咲き乱れ、果実がたわわに実る島、神様にいつでもあえる島がある」という話を思い起こし、それは南太平洋のニューカレドニア島だと思って出かけていくストーリー。のちに原田知世さん主演の映画でも大ヒットしたが、そんなユートピアの世界が熱海の山奥にあった。
熱海市泉地区のお年寄りらが3年かけて整備した手作り公園「いずみ・ハルカスガーデン」。高齢化が進み、限界集落に陥ったこの地域を蘇らせようとNPO法人グランベルテ(河村久子理事長)を設立。80歳を超す会員たちが複数の地権者と交渉し、土地を購入。延べ1800人の老人パワーで約2万平方メートルの荒れた山林を切り開き、「1年中花が咲き乱れるガーデン」を作り上げた。
黄色とオレンジの花はマリーゴールド。赤と白いのはベゴニア。複数の色の花を咲かせているのはペチュニアとサフィニア。アヤメに似た青い花はアイリス。ほかにもチューリップ、アガパンサス、ヒマワリ、コスモス、梅、桜といった30種類以上の花々が植栽されており、四季ごとに花が咲き誇る。
サツキ2500本が植わるニューカレドニア風のフランス式庭園からは真鶴半島、房総半島まで見渡せる。
このハルカスガーデンが「天国にいちばん近い山」として映画化される日はそう遠くない。そう思えるほどドラマ性と美しさを持ち合わせている。
(編集主幹・松本洋二)
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