熱海市が開催工程表 ノミネート映画作品に再出品要請、審査員も一新

熱海市の齋藤栄市長は5月29日、市役所で記者会見し、市の単独事業で来月28日からの開催を目指す第2回熱海国際映画祭について、具体的な準備工程表を示した。
「組織、内容をゼロから見直すが、映画制作を志す新しい才能を発掘し、光を当てる、というコンセプトは変わらない。コンペ作品をしっかりと確保するのが開催の前提」と話したが、準備を進めてきた実行委員会代表の髪林孝司氏(フォーカス代表取締役)を解任したことで、84の国と地域から応募があった1234作品から絞り込んだ最終ノミネート作品(約40作品)が手元にない。頼りは同映画祭コンペティション担当のマイク・ロジャース氏(映画プロデューサー)から得た作品リストと連絡先。
「この40本の作品の連絡先にアクセスし、事情を説明して謝罪しながら、あらためて出品をお願いする。DVDやブルーレイディスクで提出してもらい、翻訳して字幕もつける」と話した。
取材陣の「これからコンタクトを取り、多言語の作品を翻訳し、字幕。残り1カ月で間に合うのか」の質問には「どれだけ翻訳者を集められるかだ。やってみないと分からないが、日本の作品も多く、不可能ではない」と述べた。
ただ、全作品を取り揃えるのは事実上困難。「開催は集まった作品の本数にもよる。少なくては、国際映画祭を開催する意味がない」と中止や延期にも含みを持たせた。
審査員については「新たに設定しなければならないが、それより今は作品の確保が優先」と述べるにとどめ、「なるべく早く、結論を出す」と話した。

会場はホテル旅館は使わず、公的機関で開催し、入場料は無料。実行委員会が予約していたホテルには「予約解除」の連絡済み。キャンセル料についてはルールに基づいて対処するという。
「実施した場合、非常にコンパクトなものになる。新たな補正は組まず、当初予算の2000万円以内で行う」とし、「市が単独でやる以上、再び赤字を出すようなことになれば、誰が責任を取るのか」の問いには「市が中心でやる以上、市長たる私が責任を取る」と答えた。
映画祭開催を優先し、40作品のコンペティション作品を有している髪林氏と「和解して開催の選択肢はないのか」には「市に一切の負債や責任を負わせないと確認書を差し入れておきながら、コンペ作品を人質に660万円を要求してきた。支払わなければ、コンペティション作品は上映せず、第2回熱海国際映画祭を運営しないと。これは恐喝であり、業務妨害。髪林氏は実行委員会の決議ではなく、解任は無効と主張しているようだが、第2回熱海国際映画祭のために市が負担した500万円の内、190万円を無断でフォーカス社に送金して消費し、返還していない。これらの行為は(熱海国際映画祭開催のために設立した)組合の規則違反で脱会させた。向こうがやる可能性は否定しないが、債務超過で会場もない。映画祭を開催するのは不可能」と切り捨てた。

一方、髪林氏もこの日、市内のホテルサンミ倶楽部で会見を開き、あらためて「市と同じ日程で熱海国際映画祭を開く」考えを表明した。市に請求した660万円については、「市から実行委員会の降板を求められ、もしそうなれば熱海国際映画祭の準備に拠出してきた資金を回収するのが困難になる。既にかかっている経費の負担を要請しただけ。降板の話が先だった」と釈明した。
市長がフォーカス社から威圧による脅迫と金品の要求受けたと警察に相談に出向いたという情報には「脅迫の事実はない。戦略的な意図を感じる」と憤然とした面持ちで否定した。
市が目指す応募者の再出品については「映画祭には二重の出品を制限するルールがある。コンペのデータはこちらにあり、市が新たに作品を入手するのは難しい。今後も市に渡すつもりはない」と見解を述べた。
審査通過作品の大部分はカナダの映画祭代行会社が運営するインターネットのデータ通信で応募され、既に実行委員会に提出済み。主催者が違う熱海市への配信は二重投稿にあたり、入手は不可能という。

実行委員会関係者によれば、市から補助を受けた500万円のうち、既に190万円はフォーカス社が支出。また300万円は前回映画祭で未払いだったスカパー・ブロードキャスティング社への支払いに当てており、ほぼゼロの状態という。文化庁の補助金(1500万円)についても市が国へ申請するもので、現状の半目状態では期待できない。会場に予定している市内のホテルは貸し出す条件に「前金が前提」としており、資金的にも苦しくなっている。
両者の発言には食い違いもあり、ともに多くの課題を残す。開幕まで残り1カ月、両者とも開催には障害が多く、中止の可能性が高まってきた。混乱が続く。
(熱海ネット新聞・松本洋二)

熱海国際映画祭 熱海市VS髪林氏
■2017年12月4日 熱海市が東京・千代田区の日本記者クラブで記者会見を開き、「熱海国際映画祭」の初開催と概要を発表。齋藤栄市長と髪林孝司氏(フォーカス代表取締役)が説明。
■2018年6月 第1回熱海国際映画祭開催。6月28日〜7月1日
■9月26日 市役所で第1回熱海国際映画祭の報告会見。実行委員会代表の髪林孝司業務執行役員が、4日間の来場者は5160人で目標の約半分。収入はチケットの売り上げ金536万円など3459万円、支出は3520万円。赤字額61万円はフォース社が負担すると説明。齋藤栄市長は、事務局機能などの強化を条件に2019年も継続開催すると表明。
■2019年3月11日 齋藤栄市長が市議会に第2回熱海国際映画祭を6月28日〜7月1日に開催すると報告。補助金500万円を計上。
■5月10日 前年9月の収支報告で61万としてきた赤字額が、1465万円あることが発覚。未払金(14社)はルー監督へのグランプリ賞金100万円など896万円。
■5月15日 熱海市と実行委員会代表の髪林氏が「第1回映画祭、第2回映画祭の債務、紛争、責任はフォーカス社が全て対処し、負担する」「熱海市は第1回映画祭、第2回映画祭とも負担金の500万円以外には支払わない」確認書に署名押印。
■5月20日 齋藤栄市長と髪林氏が市役所で共同会見。未払い等の負債問題の実情と返済計画を説明し、第2回は予定通り、開催することを表明。
■5月22日 齋藤栄市長、市長の弁護士、髪林氏の3者会談。映画祭のダウンサイジング案に髪林氏が反発。5月15日の確認書に反して熱海市に660万円を要求。「支払わなければ、コンペティション作品は上映せず、第2回熱海国際映画祭を運営しない」と通告。
■5月24日 熱海市は髪林氏への660万円支払い要求を拒絶し、実行委員会代表で業務執行役員解任を通告。「運営しないならコンペティション作品を熱海市に引き渡すよう」請求。
■5月25日 齋藤栄市長は、第2回熱海国際映画祭のコンペティション担当のマイク・ロジャース氏(映画プロデューサー)と協議。引き続き業務を継続することと上映作品リストおよび媒体を市に引き渡すことで合意。
■5月27日 齋藤栄市長が市役所で記者会見し、髪林氏の解任を発表。15日の確認書を反故にして660万円の支払いを求める恐喝行為があったことを公表。合わせて映画祭の素材入手を背景に、第2回熱海国際映画祭は市独自の事業で開催すると発表。髪林氏も熱海ニューフジヤホテルで会見し、解任無効、コンペ作品引き渡し拒否を表明。第2回熱海国際映画祭を実行委員会主催で開催を明言。
■5月27日 市長会見後、マイク・ロジャース氏が態度を翻し、熱海市へのコンペティション上映予定作品の引き渡しを拒絶。
■5月29日 齋藤栄市長が市役所で記者会見。市が映画祭で上映予定の審査通過作品40本を持っていないことを明かし、その上で第2回熱海国際映画祭開催に向け、準備工程表を披露。髪林氏も記者会見。あらためて市と同じ日程で映画祭開催を表明。対決色を強める。

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