熱海市長の施政方針 「ピンチをチャンスに変え、反転攻勢に向けた施策」全掲

熱海市は市議会2月定例会に180億300万円の新年度一般会計当初予算案を上程した。市長は「回復から躍進に向けて走り出していた熱海市を取り戻すべく、ピンチをチャンスに変え、反転攻勢に向けた準備をしていく年」と述べ、コロナ禍の観光・経済の再生に向けた戦略、「新しい生活様式」に即した市民生活を支える施策に力を入れる考えを示した。2021年度の重点施策は次の通り。

【観光・経済の活性化】
1.観光地経営の仕組みづくり
市民、産業界の皆様のご尽力により、ここ数年来、回復基調にあった熱海市の観光は、未だに収束の状況が見えないコロナ禍により、かつてない打撃を受けております。令和2年の入湯税による宿泊客数は200万人を割り込み、これは入湯税が導入された昭和32年から最も少ない数字であります。
 このような状況から熱海の観光を再生・復活させるために、「新しい観光地像」を模索していく必要があります。そしてそれを主導するには、これまで取り組んできた「オール熱海」での体制による観光振興が不可欠であります。引き続き、産業界の皆様と共に、より強固な協力体制を築くとともに、観光行政の仕組みを大きく変革しつつ、社会環境の変化に柔軟に対応できる足腰の強い観光地・熱海を目指していく必要があると考えております。
 そのため、熱海市の観光の方向性を市民、産業界、議員の皆様と共有する計画の策定は不可欠であります。令和2年度中の策定を予定していました新たな観光基本計画は、コロナ禍への対応等により進捗が遅れておりましたが、観光戦略会議を再開し策定に向けて取り組んでまいります。「変化しつづける 温泉観光地 熱海」を基本理念とし、今回のコロナ禍で明らかになった課題などを新たな視点に加え、再生・復活に向けた計画を盛り込むとともに、引き続き観光地経営の舵取り役となる官民協働による体制の構築を進めてまいります。
 また、持続可能な観光地域づくりを推進するために、安定的な観光財源の確保策についても、関係各位のご理解をいただきたいと考えております。

2.コロナ禍/コロナ後における誘客施策と来遊客の満足度向上
コロナ禍の最も難しいところは、感染防止と経済活動の両立であります。熱海市では、関係団体の皆様のご協力により、「オール熱海」の体制により、感染防止対策を講じた上で、海水浴場の開設や全国に先駆けて花火大会を再開しました。しかしながら、熱海市民最大のイベントともいえる「熱海こがし祭り」をはじめ、数多くの誘客イベント、文化イベントなどが中止を余儀なくされました。今後、観光地としてコロナ禍におけるイベント開催の方法について主催者、関係者と協議しつつ、訪れる方に魅力的でかつ市民の皆様も楽しめる誘客施策を展開していきます。
 令和4年1月より大河ドラマ「鎌倉殿の13人」が放映されます。平安末期から鎌倉初期の武士の時代が確立されるダイナミックな時代において、熱海市を含む伊豆北部地域から鎌倉・湘南地域が主要な舞台となっております。これを契機として、改めて源氏・北条氏ゆかりの地域資源を掘り起こすとともに、広域的に連携しつつ誘客事業を進めてまいります。また、令和5年の大河ドラマも、熱海温泉にゆかりのある徳川家康を主人公とした「どうする家康」に決定したと発表されています。これら大河ドラマが追い風となるようなプロモーションに取り組んでまいります。
 昭和56年に開館し40年目を迎え、老朽化が進行している伊豆山郷土資料館につきましては、館内の改修工事を行ってまいります。源氏・北条氏とのゆかりの深い伊豆山神社に伝わる貴重な歴史資料の展示をリニューアルすることにより、来館者の満足度を高めてまいります。
 熱海港湾エリアは、本市の重要な観光資源の一つであります。整備を進めています熱海港海岸環境整備事業渚第4工区につきましては、「熱海港湾エリア賑わい創出整備計画(案)」の具現化も含めて、県とも協議を進めながら、早期完成に向けた取組みを更に加速してまいります。
 糸川遊歩道周辺は店舗が集積し、多くの観光客が訪れ散策を楽しめる中心的なエリアになっております。新型コロナウイルス感染症終息後の賑わい創出の契機となるよう、修景整備を進めてまいります。
 熱海温泉の歴史を象徴する熱海七湯の「小沢の湯」及び「風呂の湯・水の湯」の修景施設につきましては、和のデザインで調和された化粧路盤や植栽の整備、来遊客の利便性が高まるサインの設置等により、地域景観を演出する拠点施設として磨き上げてまいります。
 また、修景整備を行う熱海七湯の経路となる「市道上宿支線外2線」の歩行空間の修景工事を併せて実施することにより、回遊性の向上に資する基盤整備を積極的に進めてまいります。
 熱海梅園の施設整備につきましては、園内を流れる初川や周辺に植栽された花木等の景観に調和するよう、自然素材を用いた橋梁デザインにより「迎月橋(げいげつはし)」及び「漸佳橋(ざんかはし)」を改修することで、風情ある熱海梅園の魅力をより一層高めるべく、令和3年度から段階的に修景工事を進めてまいります。

【コロナ禍/コロナ後を見据えた経済活性化戦略】
熱海市の産業は、第三次産業、なかでも宿泊業・飲食業が牽引する構造になっております。コロナ禍による宿泊客数の大幅な減少の影響は、宿泊業や飲食業から、多くの仕入れ事業者、建設・建築関係事業者まで幅広く波及しており、喫緊の課題として、市内事業者の経営の下支えと消費喚起策が求められております。
 市内事業者の支援策として、コロナ禍の影響により必要となった経済変動対策貸付に対する利子補給を行うとともに、熱海商工会議所と連携し、中小企業の経営支援のための相談体制の充実に努めてまいります。
 消費喚起策として、市内の中小企業・小規模店舗で利用できる市民一人あたり2,000円のクーポンを発行するとともに、熱海商工会議所が実施するプレミアムクーポン事業及び芸妓・コンパニオン支援事業に対して補助を行ってまいります。
 また、コロナ禍を通じて、地域資源に立脚しつつ、主軸となる観光業から派生させた新たな産業の育成に取り組む必要性を感じております。その一つとして、コロナ禍で加速しているテレワークや働き方改革の進展による新たなニーズを捉え、熱海市のロケーションと多彩な不動産物件などを資源としたワーケーションを推進し、新たな顧客層の開拓に取り組んでまいります。

【教育・福祉の充実】
1.子育て・教育環境の充実
学校教育につきましては、2カ月間にわたる休校を余儀なくされましたが、必要なカリキュラムは修了できる見込みとなっております。
 このような中、子どもたち一人一人の資質・能力を一層確実に育成できるとされる教育のICT環境の整備につきましては、小中学校児童生徒1人1台へのタブレット端末の配布及び全普通教室への大型提示装置の設置が完了したところです。
 今後も、教員及び児童生徒がICT機器を効果的に活用し、主体的・対話的な教育活動がより一層図られるように、研修や学校現場での技術的なサポートや適切なタイミングで効果を測ることによる改善など、十分な支援体制のもと取り組んでまいります。
 合わせて今回、小学校に入る前からタブレット端末に慣れ親しみ、入学後すぐに効果的に活用できるようにするため、民間施設も含めた市内幼稚園・保育園・認定こども園の5歳児クラスを対象に2人に1台程度の割合でタブレット端末を配布し、幼児教育の場での活用を開始してまいります。
 また、公立の就学前施設においては、熱海市への郷土愛を育むため、市内での体験型の園外保育の充実に努めるなど幼児教育・保育の質の向上に努めてまいります。
 これまで、学校施設環境の向上と児童生徒が安心して過ごせる教育環境を確保するため、校舎外壁改修やトイレの洋式化などを中心に学校施設等の修繕を進めてまいりました。コロナ禍の中、より緊急性の高い修繕工事に注力してまいります。
 子育てに対する経済的負担が増加する多子世帯を対象に、新たな子育て支援事業を実施してまいります。
 高校生以下の児童が3人以上いる多子世帯のうち、第3子以降の児童が小学校に入学する際のランドセル等の購入費用の一部を助成するとともに、放課後児童クラブを利用する際の利用料を軽減してまいります。
  また、少子化対策の一環として、結婚新生活支援事業を実施してまいります。新婚世帯の経済的負担を軽減することにより、子どもを望む若い世代が結婚、出産、子育てへと繋がっていくために、新たに婚姻する夫婦ともに39歳以下、世帯所得400万円未満等、一定の要件を満たした場合に、新婚世帯の住居費、引越費用を補助してまいります。

2.熱海版地域包括ケアシステムの深化
人口減少、少子高齢化の進行、単身高齢者世帯の増加など社会情勢の変化とともに、育児と介護のダブルケアや8050問題など課題の複合化・複雑化により、従来の高齢者、障がい者、子ども・子育て世帯、生活困窮者など、属性ごとに区切られた支援体制では、適切な支援につながらない事例が増加しつつあります。また、新型コロナウイルス感染症の影響などによる景気の低迷を背景とした生活困窮者などの新たな課題や新しい生活様式による地域活動の制限なども生じております。
 このような状況の中、すべての人々が地域、暮らし、生きがいを共に創り、高め合うことができる地域共生社会の実現に向けて、これまでの高齢期におけるケアを中心に構築を進めてきた「熱海版地域包括ケアシステム」について、包括的な支援体制の整備を進め、更に深化を図っていきます。
 令和3年度は、既存の相談支援等の取組みを活かしつつ、地域住民の複合化・複雑化した支援ニーズに対応する包括的な支援体制を構築するため、相談支援、参加支援、地域づくりに向けた支援を一体的に実施する「重層的支援体制整備事業」について、地域福祉推進の中核的な役割を担う熱海市社会福祉協議会と連携し、事業実施に向けた移行準備を進めてまいります。

3.健康寿命の延伸
市民の健康寿命の延伸は、熱海市における経済の持続的発展と豊かな市民の暮らしの前提となるものであり、そのためにも、病気の予防・早期発見につながる健診を受診するなどの健康づくりに取り組んでいただくことが重要となります。
 がん検診の受診率向上のため、令和2年度より特定健康診査受診者を対象に抽選でA-PLUS商品が当たるインセンティブ事業を実施しましたが、がん検診受診者にも対象を拡大します。また、令和2年度に新型コロナウイルス感染症の影響で実施を見合わせた、過去の受診歴や健診結果データ等に基づくAI(人工知能)を活用したハガキによる受診勧奨を実施してまいります。

【仕事・くらしの変革】
1.新型コロナウイルス感染症への対応
新型コロナウイルス感染症は、市民の生命やくらし、地域経済に大きな影響を与えていることから、最優先事項として熱海市が一丸となって感染拡大防止に取り組み社会経済活動との両立を図っていく必要があります。一人ひとりの基本的な感染防止策の徹底を引き続きお願いするとともに、令和3年4月より実施が予定されております新型コロナウイルスワクチンの住民接種につきましては、国や県、医療機関などの関係機関と連携を図りながら遅滞なく実施できる体制を構築してまいります。
 小中学校につきましては、子どもの健やかな学びの機会を保障するため、熱海市の感染状況に応じた感染防止策を徹底し、可能な限りの教育活動を行ってまいります。
 保育所等につきましては、コロナ禍のなか、各施設の保育士の方の御尽力によりこれまで継続して開所していただいているところです。今後もその必要性から、感染防止策を徹底しつつ原則開所を維持するとともに、民間施設に対し必要な支援を行ってまいります。

2.地域コミュニティ活動の支援
少子高齢化や人口減少など様々な要因を背景に町内会やNPO団体などの市民が主体的に行動する団体では、加入者の減少や担い手不足等が生じ、その存続や活動の継続に不安を抱いております。
 そのため令和元年度に「地域コミュニティ活動推進事業補助金」を創設し、これらの団体が抱える現状と課題を踏まえ、その解消に資するための支援を行ってまいりましたが、令和3年度も引き続き支援を進めてまいります。
 また、令和3年度には、新たに「地域づくり交付金」を創設し、持続可能で活力ある地域社会の実現を目指し、地域全体での課題解決への取組みと相互に支え合う仕組みを構築し、自ら考え行動する住民自治を基本とした協働による地域づくりを推進する団体の活動を継続的に支援してまいります。
 また、市職員も地域のあり方、地域づくりについて学び、コミュニティ活動に対する現状と課題に対する理解を更に深め、課題解決に積極的に取り組む団体と、共に考え、力を併せて挑戦する取組みを進め、協働による地域づくりを一層推進してまいります。

3.市民インフラの整備、安全・安心の確保
全国各地で多発する災害に備え、市民の安全・安心の確保に向けて積極的に取り組んでまいります。
 初島地区を管轄する消防団第9分団消防ポンプ自動車の更新整備をするとともに、地域の消防防災拠点である第4分団詰所の修繕を行うなど、更なる消防力の充実を図ってまいります。
 また、救急現場において、大切な命を救うため、応急手当を行っていただいた方に対し、「救急協力者感謝カード」を配布させていただき、その勇気ある行動に感謝の意を伝えるとともに、応急手当実施後の不安や、悩みをサポートしてまいります。
 上水道は日常生活に欠かせない重要なライフラインのひとつです。安心して飲める水を安定して供給できるよう、令和2年度から一里茶屋浄水場の整備に取り組んでおります。また、泉第二配水池等の更新工事も同時に進め、緊急時に対応できるよう自己水源の活用拡大に努めてまいります。
 (仮称)熱海フォーラム整備事業につきましては、現在、新型コロナウイルス感染症への対応を最優先すべきであることから、その検討を凍結しておりますが、今後の同感染症の状況や熱海市の財政状況などを踏まえ、検討再開の時期を探ってまいります。
 以上が令和3年度における重点施策の概要ですが、より複雑で解決の容易でない政策課題が増加する中、新型コロナウイルス感染症に的確に対応しながら、第五次熱海市総合計画に掲げる持続可能なまちづくりを着実に実現していくためには、これまで以上にスピード感を持ちつつ、解決策を立案し、かつ強力に実行していく必要があります。
 このため、市役所の体制の強化を図りながら、総力を挙げて、各種政策課題に取り組んでまいります。

各部門の主要施策について
(1) 経営企画部門
公共施設マネジメントにつきましては、令和3年度が熱海市公共施設個別施設アクションプラン第1期の最終年度となります。アクションプラン第1期では、施設の長寿命化を視野に入れた準備期間として施設改修を進めてまいりました。令和3年度は、この取組み・効果を検証した上で令和4年度から始まるアクションプラン第2期に向け準備を進めてまいります。その上で、老朽化が進んでいる市役所第2庁舎をはじめとした市役所敷地内の庁舎等について、長期的な視点に立ち、将来的な維持管理及び配置のあり方について検討してまいります。
 また、市所有の未利用・低利用の資産に関しては、公共施設マネジメントの取組みの一環として、熱海市の各種計画を踏まえながら売却を含め利活用を図ってまいります。特に、地域経済の生産性向上や地域活性化への貢献が見込まれる資産については、長期的な視点のもと民間投資の促進など積極的な活用を進めてまいります。
 職員は最大の経営資源であることから、職員一人ひとりが自主的に創意工夫とチャレンジ精神を持って行動するための人材の育成を行うとともに、引き続き意欲と能力の高い職員の確保を目指した採用を行ってまいります。また、職員が働きやすい環境の整備を進めるとともに、コロナ禍における柔軟な働き方による職員の感染防止と、感染者発生時の業務継続など組織力の強化にも取り組んでまいります。
 情報システムについては、基幹系システムの更新に合わせて近隣市町と導入を進めてきた自治体クラウドを、令和3年10月から運用開始する予定です。これにより行政事務の質の向上と経費の削減を図ってまいります。また、行政におけるデジタル化の一端となる行政情報のオープンデータ化を進めてまいります。 
 広報については、行政や防災、観光などの情報を取得できるメールマガジンの登録者を増やす取組みを行うとともに、多くの人が日常的に使用しているSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の活用を進めてまいります。
 行政におけるデジタル化の推進につきましては、市民の皆様の利便性向上、行政内部の事務効率向上等の視点から、行政手続きにおける押印の見直しやぴったりサービスを利用したオンライン申請の導入検討など、行政サービスの効率化を推進してまいります。
 また、市役所の組織・機構について、第五次熱海市総合計画の推進体制を整備していくため、令和4年度の見直しに向けて検討してまいります。

(2) 市民生活部門
第1庁舎1階に位置する市民生活課及び税務課の窓口に、新型コロナウイルス感染拡大防止のために飛沫感染防止用の大型シートを設置し、来庁者及び職員の感染不安の軽減を図ってまいります。
 また、市民生活課において運用する「窓口受付システム」により、来庁者の待ち時間の見える化による利便性の向上とともに、できる限り「密」を回避できるようにしてまいります。
 熱海市の令和2年12月末現在のマイナンバーカードの交付率は、約28.3%となっており、市民の約3分の1が取得されております。国では、令和3年3月からマイナンバーカードの保険証としての利用を開始する予定であるなど、今後も多様なサービスへの利活用を計画していることから、市民の皆様への取得勧奨を積極的に進めてまいります。
 今後ともマイナンバーカードの取得のため、1カ月に一度程度、休日に窓口を開設するなど、カードの取得機会を増やし、取得しやすい環境を提供してまいります。
 令和2年度から検討を開始している「第三次熱海市環境基本計画」では、先の11月市議会で表明いたしましたとおり、地球温暖化の進行を防ぐための具体的施策の方向性についてお示しできるように改定作業を進めてまいります。脱炭素社会の実現には、地域社会全体で、主体的かつ迅速に温暖化防止への取組みを強力に推進していかなければならないことから、市民の皆様の積極的な取組みをお願いするとともに、期待をしております。
 また、同じく策定に着手済みの「熱海市男女共同参画推進計画」につきましては、人権の尊重や個性を活かして活躍できる社会の実現などを念頭に置き、計画策定に取り組んでまいります。
 さらに、昨今多発する自然災害とその復旧、復興において大きな課題となる「災害廃棄物」の集積と処理方法につきましては、「熱海市災害廃棄物処理計画」を策定し、科学的観点と経済合理性に基づき処理等を進めることとしていますが、その集積に利用する土地の条件等を含めて抜本的に見直すべき時期にあることから、改めて計画を策定してまいります。
 防災・危機管理では、大規模災害等の発生に備え、老朽化した同報系防災行政無線子局の更新整備を行い、市民の皆様への確実な情報伝達に努めてまいります。
 また、台風等の風水害時における避難所運営につきましては、安全・安心を目指し、新型コロナウイルス感染予防対策などにも対応できるよう取り組んでまいります。

(3) 観光経済部門
観光振興につきましては、観光ブランド・プロモーションに取り組むとともに、メディア・プロモーション事業との両輪により、新しい熱海ブランドの構築を進めてまいります。また、熱海型DMO構築の動きと連動した各種調査の実施や、観光客の平準化を目指した泊食分離の可能性などを検証してまいります。
 別荘所有者の来訪促進に取り組んでいる「熱海型別荘コンシェルジュ」事業について、継続的な効果測定を行いつつ、実効性の高い取組みを進めてまいります。
 昨年9月に認定を受けましたブルネイ・ダルサラーム国との東京2020オリンピック・パラリンピックホストタウン交流については、大会後の経済的な交流の実現に向けた準備を進めてまいります。
 産業振興につきましては、適宜、コロナ禍における産業界への支援策を講じるとともに、リノベーションまちづくり構想を具現化するための検討、熱海市チャレンジ応援センターの機能強化に努めてまいります。また、魅力ある買い物環境づくりを支援するため、商店街が取り組むアーケード改修などを支援してまいります。
 農林水産振興につきましは、近年、問題化しているナラ枯れへの対策として補助金を創設するとともに、有害鳥獣への対応、被害防止に引き続き取り組んでまいります。また、農地の集積や適切な農道整備、農業の担い手支援による農業基盤の整備や、水産物供給基盤機能保全事業として初島における臨港道路の整備や、養殖漁業に対する支援など漁業基盤の整備に取り組んでまいります。

(4) 建設部門
コンパクトシティの形成に向けたアクションプランとなります「立地適正化計画」につきましては、今後想定される人の動きの変化を見据えたうえで、本年度中に公表してまいります。また、この将来都市構造に合わせ、引き続き都市計画施設等の必要性を再検証してまいります。
 市営住宅につきましては、立地適正化計画で示される将来都市構造に沿った集約化、効率的な維持管理手法の検討を進めてまいります。
 空き家対策につきましては、まちなか居住の促進に向けた貴重な資源と考え、空き家の流通及び利活用を推進するため民間事業者と連携し、情報交換を進めてまいります。
 建築物等の耐震化につきましては、引き続き、関係団体等と連携しつつ、積極的に各種施策を展開してまいります。併せて、地震発生時における建物倒壊による道路閉塞を未然に防止するため、緊急輸送ルート沿道の建築物の耐震化を促進してまいります。
 道路、橋梁などにつきましては、市民生活に身近な道路の利便性や安全性を高めるため、改良を積極的に進めるとともに、定期的な見回り点検を実施しながら道路の補修工事を実施してまいります。また、令和元年度に見直した熱海市橋梁長寿命化修繕計画に基づき、橋梁の長寿命化及び耐震化工事を計画的に進めてまいります。
 公園等につきましては、新型コロナウイルス感染症対策として、熱海梅園の有料運営における入場整理体制や検温方法の見直し等の感染防止策の改善に努めてまいります。また、海水浴場の開設における入退場管理等の実施体制の充実と、AIカメラを用いた場内の観測状況に関する情報システムの高度化などを進めることにより、来遊される皆様の安全・安心な利用環境を整えてまいります。

(5) 健康福祉部門
地域福祉を推進するため、熱海市の地域福祉計画と熱海市社会福祉協議会の地域福祉活動計画を一体とした熱海市地域共生プランを実行してまいります。
 この計画は、各福祉分野の上位計画として、各福祉の個別計画に基づく個別支援が同じ方向に進めるように束ねる役割を担います。また、「ひとづくり」「地域づくり」、重層的支援体制整備事業をはじめとした「しくみづくり」を基本目標として設定し、市民や地域活動団体、社会福祉法人、事業者、熱海市、熱海市社会福祉協議会などが共に連携し、誰もが支えあう地域共生社会を目指すための指針としての役割も担います。
 高齢者福祉・介護につきましては、「第九次熱海市高齢者福祉計画及び第八期熱海市介護保険事業計画」に基づき、団塊の世代全てが後期高齢者となる2025年、団塊ジュニア世代が65歳以上になる2040年を見据え、「住み慣れた地域で生きがいを持ち続けながら安心していきいきと暮らせる地域づくり」の理念のもと「効果的な介護予防と健康づくりによる健康寿命延伸」「安心して暮らすための体制整備」「支えあいの地域づくりと社会参加」等の施策に対し、具体的な目標を掲げ推進してまいります。
 また、高齢者が介護を必要とする状態になっても、住み慣れた地域で安心して生活を続けられるよう、医療・介護・住まい・生活支援に関し、包括的に取り組んでまいります。
 介護給付等費用適正化事業として、「要介護認定の適正化」「ケアプランの点検」「住宅改修等の点検」「医療情報との突合・縦覧点検」「介護給付費通知」「給付実績の活用」を実施するとともに、介護サービス従事者等の人材の確保と育成等にも努めてまいります。
 生活習慣病対策につきましては、令和元年度の子宮頸がんと乳がん検診に導入した「ナッジ理論に基づいた受診勧奨ハガキ」について、新たに胃カメラ検診の未受診者に対しても導入してまいります。
 また、LINEアプリを活用した特定保健指導やSNSや動画配信による健康づくりのアドバイスを実施してまいります。
 令和2年度から実施しております高齢者の保健事業と介護予防の一体的取組みについては、対象地域を拡げ、実施してまいります。
 子育て支援につきましては、子育て支援に関する手続きの利便性の向上を図るため、「子育てワンストップサービス」による電子申請接続サービスの導入に向け取り組んでまいります。
 障がい福祉につきましては、障がいをお持ちの方が住み慣れた地域で安心して暮らしていけるよう、地域生活支援拠点の整備に向けて関係機関と引き続き協議を重ねてまいります。
 生活困窮者の支援につきましては、現下の状況を踏まえ、生活にお困りの方が漏れなく必要な支援につながるよう、熱海市社会福祉協議会など関係機関と連携し、生活困窮者自立支援事業や資金の貸付制度の広報を充実させるとともに、必要に応じ、生活保護制度による適切かつ速やかな保護に努めてまいります。
 スポーツ振興につきましては、生涯スポーツの普及・推進を図りつつ、市民ニーズや生活様式の変化を踏まえながら、第二次熱海市スポーツ推進計画の策定を進めてまいります。

(6) 公営企業部門
公営企業三会計につきましては、ライフラインを担う事業として、効率的かつ安定的な事業運営に努め、安全・安心で豊かな市民生活の向上に寄与してまいります。
 水道事業につきましては、令和2年度より離島初島簡易水道事業を上水道事業に統合いたしました。今後は老朽化が進んでいる海底配水管の布設替工事を令和6年度の完成に向けて進めてまいります。また、災害や断水事故などの緊急時に備え、応急給水実施計画を策定し、関係機関と情報共有を行いながら更なる連携強化に努めてまいります。
 県営駿豆水道につきましては、引き続き三島市、函南町と共に二市一町の足並みを揃えながら、将来を見据えた事業のあり方や料金につきまして、県企業局と協議を行ってまいります。また、安定した給水・経営を継続するため、広域連携について研究を行ってまいります。
 下水道事業につきましては、ストックマネジメント計画に基づき、老朽化した浄水管理センター設備や管路の更新工事を進めるとともに、適切な維持管理を行ってまいります。
 温泉事業につきましては、源泉施設の整備や、老朽化した送配湯管等の更新を進め、効率的な運転管理と安定給湯に努めてまいります。

(7) 消防部門
消防救急業務に支障をきたさないよう、かねてから、新型コロナウイルスの感染予防対策の徹底を図っておりますが、引き続き、最善の対策を講じながら、消防救急隊員の二次感染の防止に努めてまいります。
 火災予防対策につきましては、高齢者の安全確保を重点目標として、住宅用火災警報器の設置率の向上、維持管理の啓発に努めるとともに、防火対象物への予防査察を強化し、違反是正の徹底を通じ、火災の未然防止に努めてまいります。
 救急体制の強化につきましては、高度化する救急需要に対応するため、救急救命士や気管挿管等の救命処置が実施できる認定救命士の養成を進めてまいります。
 消防力の要は人材です。消防職員の更なる知識、技術の向上のため、部内研修の充実を図り、外部派遣研修を積極的に行い、人材育成に努めてまいります。
 今後とも、地域防災力の充実のため、消防団との連携強化を図り、常備、非常備消防が一体となり、安全・安心の確保に努めてまいります。

(8) 教育文化部門
幼児教育の質の向上につきましては、タブレットの活用に合わせて、保護者の利便性向上や保育士等の多忙化解消を目的にICT機器の導入を進めてまいります。また、コロナ禍により研修の機会が制限される中、オンライン研修を導入してまいります。
 学校教育につきましては、新学習指導要領の着実な実施をはじめ教職員の多忙化解消のための取組みなど、継続・改善に取り組んでまいります。
 網代小学校と多賀小学校が令和3年4月より統合いたしますが、統合後の児童への心身への影響など、特に注視してまいります。
 また、網代地区の地域活性化とともに網代小学校の跡地利用・活用について、地元の方々との協議に基づき進めてまいります。
 社会教育につきましては、市民の生涯学習活動の拠点施設である中央公民館にWi-Fiを整備し、学習環境の拡充に取り組むとともに、子育て支援の観点から家庭教育に対する支援にも努めてまいります。また、ここ数年の熱海市の外国人住民登録者数の増加傾向を踏まえ、多文化共生の観点から日本語教室等の質の向上を図るとともに、やさしい日本語による生活ガイドの作成に向けた取組みを進めてまいります。
 重要文化財の旧日向別邸につきましては、令和3年9月末に工期を迎える保存修理工事の完了後、令和4年度当初の一般公開再開を目指し、展示制作等の整備作業を進めてまいります。
 国指定史跡の江戸城石垣石丁場跡につきましては、保存活用計画に基づき、将来の整備基本計画策定に向けた取組みを継続してまいります。
 起雲閣につきましては、今後とも持続的に開設していけるよう、必要な修繕を実施するとともに今後は修繕計画に基づき対応してまいります。
 (仮称)熱海文学館につきましては、杉本苑子先生のご遺志に添う文学館の開設を目指し、外部の専門家を交えた設立準備委員会を中心に、基本計画の策定作業を進めてまいります。
 図書館につきましては、コロナ禍における電子書籍の有効活用や学校との連携を深めて、タブレットによる子どもたちの読書量の向上を図ってまいります。また、図書館運営のあり方に関して、引き続き図書館協議会で議論を重ねてまいります。
 以上の施策をはじめ、教育振興基本計画・教育大綱に位置付けた目標に向け、諸施策を着実に進めてまいります。
熱海市長  齊藤 栄

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