熱海市で7月3日に発生した大規模な土石流災害で、「熱海市盛り土流出事故被害者の会」会員の遺族5人が11月10日、起点となった盛り土を含む土地の現・前所有者について、熱海署に殺人容疑で告訴状を提出した。同会の会長で遺族の瀬下雄史さんが8月、両者を業務上過失致死容疑などで刑事告訴したが、今回は「住民らが死亡しても構わないという『未必の故意』があった」として殺人容疑で告訴した。
告訴状によると、2011年まで土地を所有していた神奈川県小田原市の不動産管理会社(清算)の元幹部は、熱海市の中止要請を無視して土砂搬入を続けるなどし、現所有者である東京都の企業グループ前会長も、市から要請を受けながら災害防止措置を実施しなかったなどとしている。
土石流で夫の小川徹さん(71)を亡くし、告訴に加わった慶子さん(71)は、排水整備などが設けられていなかった盛り土の崩落は「起きるべくして起きた」と指摘。現•前所有者に加え、危険な盛り土の存在を10年以上も住民に知らせてこなかった熱海市や県に対しても怒りを隠さず、「命を返してほしい」と訴えた。
また長女の西澤友紀さん(44)を亡くした小磯洋子さん(71)は「娘は殺された。残された家族にも大きな傷跡を残している」と話し、笑顔を見せなくなった5歳の孫の将来を案じた。友紀さんは逢初川沿いにあった自宅の窓から娘を逃した直後、大量の土砂に巻き込まれたという。
殺人罪には殺意の立証という高いハードルがあるが、弁護団長の加藤博太郎弁護士は「今回の件は過失ではなく、人が死ぬ危険が生じてもしかたなないという未必の故意を認識していた悪質な事件。裁判を通して明らかにしていきたい」と述べた。
(熱海ネット新聞)
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