熱海市伊豆山で昨年7月3日に起きた大規模な土石流災害を巡り、「熱海市盛り土流出事故被害者の会」(瀬下雄史会長は)9月5日、崩落の起点となった土地での不適切な盛り土造成に対し行政権限を十分に行使しなかったなどとして、熱海市と静岡県に64億752万1388円の損害賠償を求めて静岡地裁沼津支部に提訴した。原告は犠牲者遺族被災者110人と3法人。
訴状によると、熱海市が2007年に前所有者が盛り土造成の計画書を提出した際、防災対策などの重要事項が抜けていたのにそのまま受理したのは「法令上の要件を欠き違法」と指摘。さらに市は、土砂崩落の危険性を認識しながら規制権限を行使せず、発生当日も避難指示を出さずに被害を拡大させたとしている。
県については、盛り土の不適切さと危険性を認識しながら、是正措置を講じるよう市を十分に指導しなかったなどとしている。
裁判は、遺族らが土地の前・現所有者らを相手取って昨年9月に起こした先行訴訟と併合して審理される見通し。土石流の発生を予見できたのか、被害を防げたのかが争点となる見通しで、長期化が予想される。
母親の陽子さん(77)を亡くした瀬下雄史会長(54)は「予見可能性があったが無視した」。長女の西澤友紀さん(44)を失った小磯洋子さん(72)は「なぜ市は避難指示を出さなかったのか。(住民に)盛り土があると知らせていなかったことも許せない」と市の対応を批判した。
今回の市長選の最大の争点は土石流災害の原因追及と復旧。伊豆山の被災現場地域では、両候補が勢力的に街頭演説を行うなど、それぞれの主張を訴えている。
(熱海ネット新聞)
■5期目を目指す齋藤栄氏(現市長)
「訴状が届き次第、市としての対応について検討していく。引き続き、伊豆山の復旧に全力を尽くしていく。私は決して逃げない。途中で放り出すこともしない。どんな困難があろうと、熱海の未来を切り開いていく」
■新人で元市議の泉明寺みずほ氏
「現職は1年経っても責任の所在がどこにあるかを自分で受け止めていない。被災者・犠牲者遺族の支援が最優先。司法の場で判断が出たら上訴せず、市は速やかに補償問題に応じるべきだ。私は責任を取るために市長になる」
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