2018年度からの次期「熱海市観光基本計画」策定の準備を進める熱海市は4月8日、市役所で観光地経営の組織「熱海型DMO」創設へ向けたシンポジウムを開いた。市の幹部職員出身の市内6観光協会の役員、市議会公共施設整備等特別委員会の稲村千尋委員長、県全体のDMO組織「しずおかツーリズムビューロー」、伊豆地域のDMO組織「美しい伊豆創造センター」の職員、JTB中部社員など24人が出席。DMO推進機構の大社(おおこそ)允代表理事、米国ハワイ州のDMO組織「ハワイ・ツーリズム・オーソリティ(HTA)」元理事でマウイホテル協会の木村恭子会長から話を聞いた。
熱海市は地方創生推進交付金に加え、新たなホテル宿泊税の徴収などを念頭に、ハワイ州のHTAをお手本とした「熱海型DMO」を組織し、6観光協会を傘下に収めるプランを検討している。5月のGW明けに熱海市観光戦略会議を開き、策定の準備を本格化させる。
シンポジウムでは、まず日本型DMO形成を主導する大社氏が、観光地経営の視点に立った観光地域づくりのかじ取り役となる組織「DMO」の概要について説明。続いて木村氏が自ら理事を務めた米国ハワイ州のDMO組織「HTA」の組織形態などを紹介した。
ハワイ州では、観光戦略や誘客プロモーションは、州政府ではなく、9人の理事で構成するDMO組織「HTA」が担う。理事の3人は州知事が任命。下院が推薦する3人から1人を州知事が選び、上院が承認する。残りはオアフ、カウアイ、マウイ、ハワイ、モロカイ、ラナイの6島とハワイ文化に精通している人を出身島や業種が偏らないように、バランスよく選出するという。
「州政府は経済指標や予算を示すだけで、具体的な観光政策やマーケティングはHTAが決める。州政府の局長の年収は1000万円程度ですが、HTAのCEOは約3000万円。そのくらい観光のスペシャリストがハワイ州6島の観光を考え、観光客をバランスよくすべての島に送る。職員29人の人事や給料を決めるのも理事会。州政府は一切、口出しできません」と木村氏。
HTAが発足したのは、1998年。前代未聞ともいえるホテル税の増税をホテル側が申し出、6%から7・25パーセントに引き上げた。このアップ分を財源にDMOを組織化したという。
説明を受けた森本要副市長は「ハワイは6つの島に分かれていて、それぞれの島が魅力を発信しながら、HTAがしっかりとまとめあげている。熱海市にも6観光協会があり、それぞれ特筆すべき個性がある。観光地経営の視点からも、HTAのような組織で熱海全体をまとめ上げていくことも必要かなと…」と軽妙に話した。
大社氏は「DMOのトップは外部からの優秀な人材の起用が多い。しかし、かつて稲取観光協会では事務局長を公募し、選ばれた女性が結果を残したものの、継続できなかった。権限と予算を与えなければ、成功しない」とくぎを刺した。
熱海市は今年度において、見識豊かな大社氏が主導して観光基本計画を策定。観光ブランド゙プロモーションおよび受け入れ準備整備と併せて「熱海型DMO」の組織化を選択肢の一つとして検討すると思われる。ただ、オール熱海でのDMO構築を掲げたシンポジウムだったにもかかわらず、案内がなかったのか、足元ともいえる旅館ホテル関係者、芸妓組合、飲食団体団体の姿が会場になかったのが気にかかる。
(熱海ネット新聞・松本洋二)
◆日本版DMO(デスティネ-ション・マネジメント・オーガニゼーション) 「観光地経営」の視点に立った観光地域づくりの舵取り役として、官民の多様な関係者と協同しながら、コンセプトに基づいた観光地域づくりを実現するための戦略を策定する。戦略を着実に実施するための調整機能を備えた法人で地域の「稼ぐ力」を引き出す。
◆市内の観光協会 熱海市、伊豆山温泉、伊豆湯河原温泉、多賀、網代温泉、初島区事業協同組合
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