
市長選を半年後に控える熱海市議会2月定例会が14日、混乱の中で閉幕した。ここ3週間余り、議会を傍聴していて感じたのは、斉藤栄市長の孤立である。それを象徴していたのが、この日の平成26年度熱海市一般会計予算の採決。だれも報じないだろうから、あえて書く。
結果から先に言えば、起立(賛成)しなかったのは米山秀夫、金子芳正(公明)、梅原一美(自民党)、村山憲三(市政調査会)の4議員。12-4で可決された。しかし最重要議案にも関わらず、4人の反対がでたのも異例だが、もっと驚くのは市長を擁護する議員が全くいなかったことだ。
議案の予備審査となる委員会で反対者が出た場合、国会同様に本会議の採決前に「賛成」と「反対」の立場から討論を行なう。「反対」の立場から村山、米山議員が登壇したものの、「賛成」の討論議員は不在という、異例の採決となった。与党の民主党・市民クラブ議員団、あたみ絆の会は粛々と賛成に回ったが、そこには無事予算成立の市長の笑顔は一切なく、閉会後の各会派へのあいさつ回りも、表情がこわばり、口数も少なかった。
今議会を振り返れば、自民・公明の圧勝だった。
いきなり蛭川真希子議員(自民)がカジノ誘致の賛否を迫り、消極的な返答の市長は窮地に立たされた。中押しは田中秀宝議員(同)。耐震改修の補助金の財源に入湯税の活用は難しいとしてきた市の判断が、総務省の見解と違うことを指摘。前者は熱海市観光協会と熱海商工会議所、後者は熱海温泉ホテル旅館協同組合の声を反映させたもので、市長は観光、商工業者をまとめて敵に回す構図となった。
とどめは米山議員がすっぱ抜いた旧岡本ホテル跡地の灰色購入。市は事前に3億1000万円とする鑑定評価意見書を取り寄せておきながら、議会にはその事実を隠し、3億9000万円の高値での購入契約を4月1日に結ぶとした。結局、これに議会から待ったがかかり、市長は3月28日までに土地所有者と再交渉を行い、値段を下げられなければ、契約を先延ばし、という決断を迫られ、実行を確約させられた。
これまで是々非々とし、市長を側面から支援してきた村山議員も議会の承認を得ないまま、あたかも決まったがごとく購入額、契約日を決めた斉藤市政に「議会無視、おごりがある」とかみついた。
この日の予算案の採決で、他の議員があえて反対しなかったのは、予算を止めて市経済を混乱させたくないという思いのほかに、勝負あったという判断も見逃せない。
それでも市長は高齢者、リベラルな女性たちに厚く信任されており、支持者は多い。いまのところ、9月市長選にだれも立候補を表明していないが、3選が濃厚と思われた市長が、ここに来てオウンゴールを重ねたことで情勢は混沌としてきた。
(編集主幹・松本洋二)
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