【編集室】ポピュリスト的な定数削減、よぎる「自爆」

熱海市議会議員定数の削減が2月定例会で賛成多数で可決された。議会を傍聴していて気になったのは、単なるポピュリスト的な定数削減ではなかったかという疑念だ。市議選を前に「自ら身を切り2人削減」は聞いていて心地よいが、いま熱海市に求められているのは果して「行政改革」なのか。市民の声を広く吸い上げ、市長に物言える「議会の強化」ではないかと。

地方分権が進めば、市議会の役割は今以上に重要になる。当局が提案する条例や予算を質問だけして、何も修正せずに成立させたり、議員提案の条例が不毛だったりする議会では対応できない。求められるは市民の声を幅広く吸い上げ、市政に還元できる見識ある人材だ。

市議会はボランティアでも良いという人もいる。これはおかしな話だ。いろいろな調査をし、準備をするためには、フルタイムの議員が必要。本業を抱えながら片手間に議員をやられてはそれこそ迷惑。その程度のことなら町内会長の会合でことが済む。現在の議員構成をみても大きな町内会や団体の支援を受けた人や家業を引き継いだ経営者がほとんどだ。
市長が「住まうまち熱海づくり」の柱に位置付ける市営住宅に住む高齢者の代表もいなければ、東京、神奈川から移住してきた“熱海都民”もいない。例外なく熱海出身者。これで本当に少子高齢者対策や首都圏からの移住者促進ができるのか。議員定数が削減されただけに余計に不安になってしまう。

反対討論で米山秀夫議員が話した言葉が耳に残る。「100歩譲って議員数を減らすのなら、議会での質問時間を増やすとか、議員一人ひとりの能力向上のために手当をどうするとか、市議会のなかにも定年制を敷いて議会内の新陳代謝をはかるとか、そういう議論がない」。
市議会は国会とは違い、市長がいて、議会がある。市長がいう二元代表制だ。米国と同じ大統領制だから、本来なら議員をサポートする政策スタッフが必要なはず。ところが、政務活動費がまったく出ない熱海市議会では、議員が秘書を雇用することもできず、議会事務局がその任を担う。彼らは市の職員であり、市長を見て行動をする。これでは市政をチェックするのは難しい。

市議会の定数削減をやるならば、その分、市議会議員の給与をあげて、有能な人材が議会を目指せるようにすべきだろう。月額39万円(手取り29万円)の給料で東京に新幹線通勤するようなエリートサラリーマンが市議に転身するものか。市職員だって退職して議員を目指す人はいまい。
質の向上を議論しないままポピュリズムに流されて議員数を減らしたとすれば、行政改革の成果以上に反動が気にかかる。議会と対峙する大統領のしたり顔が目に浮かぶ。
(主幹・松本洋二)

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