

戦後最大の経済危機を迎えている熱海市で、かつて市政を巡って丁々発止を演じた3氏が、初めて胸襟(きょうきん)を開いて話し合い、新型コロナウイルスの打開に向けて協働に動き出した。
熱海市の老舗旅館「月の栖 熱海聚楽ホテル」の森田金清社長は4月27日、熱海市役所に齋藤栄市長を訪ね、介護施設で働く人たちの新型コロナウイルス対策に役立ててもらおうと、マスク5000枚を寄贈した。
森田氏は、特別養護老人ホーム(特養)「姫の沢荘」(田島秀雄理事長)で評議員を務め、同施設などの介護施設で働く人たちが、新型コロナウイルス感染の不安を抱え、心が折れそうな中で勤務に従事していることを聴取。「何かできるのものはないか」と自問し、田島理事長とも話し合い、市内の介護事業者へのマスク寄贈を申し出た。
「熱海の半分が高齢者。高齢者を抱える家族は施設や通所介護(デイサービス)にお世話になることが多いが、新型コロナウイルスでこの辺が崩壊すると、家族の負担が増え、熱海の根底が崩れる。障がい者施設も含め、マスクが不足している施設で働く人たちに配っていただきたい」
マスクは、知人のルートを使い、中国から入手。使用者の不安緩和のため、医者が手術でも使える高品質を用意した。
市長は「森田社長、ありがとうございます」と笑顔で感謝の言葉を述べ、「これまでも複数の方々から手作りのマスクを寄贈していただいたが、5000枚のマスクは大変ありがたい。市としてもすべきことはしっかりやっていくが、それぞれの皆さんのお力を借り、一丸となって新型コロナウイルスに立ち向かいことは大きな力となる」と、連携を呼びかけた。
齋藤栄市長とは、微妙な関係にあった森田氏の背中を推したのが、熱海市と隣接する湯河原町のコロナ感染だ。公には報じられていないが、4月17日に同町の介護老人保健施設の職員が新型コロナウイルスに感染し、その後、複数の人の感染が確認されている。熱海市でも情報が飛び交い、職員の不安を増長させている。

同席した田島理事長は「職員の中には若い女性も勤務しており、両親が心配されて、休ませて欲しいと。しかし、1人でも欠けたらアウトという厳しい状況が続いているのが実情」と説明した上で、「飲食店は休業補償があるが、福祉、特に特養とか介護、障がい者施設は続けて欲しい、という要望だけで休業手当がない。事業所が休み、高齢者が死亡する事例も相次いでいる。熱海市は日本でもダントツに高齢者が多い地域。国、県に対して熱海が声を上げれば、窮状が分かってもらえる」と支援を求めた。
市長は「テレビを観ていても、いま最も危惧されているのが医療崩壊。この問題には保育も入っており、重要事項と考えている」と述べた。
1日も早い新型コロナウイルスの終息への思いが3氏の連携を呼び、サプライズの3者会談に。今後の市政にもプラスに影響しそうだ。
(熱海ネット新聞・松本洋二)


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