熱海市議会9月定例会の一般質問が10月10日始まり、初日から4選を果たした齋藤栄市長が選挙公約に掲げた市税としての「宿泊税」導入に質問が集中した。
稲村千尋氏は、宿泊税を導入しているのは、東京都や大阪府、京都市、金沢市(来年4月)といずれも観光文化遺産に恵まれた大都市であり、人口約3万7千人の温泉観光都市・熱海市での導入に警鐘を鳴らした。
「宿泊税を今月から導入した京都市は世界遺産が17もある日本一の観光歴史文化都市。来年4月から導入する金沢市も城下町としての文化遺産と景観がある。ともに日本を代表する文化都市で宿泊税を導入しても観光客が離れることはない。一方、熱海市はいま熱海駅周辺に人があふれ活気があると言われているが、京都や金沢に比べ文化遺産や文化的景観は大変見劣りする。今のブームが数年で去った場合、宿泊税導入は熱海に痛手になるとは考えないのか」と齋藤栄市長にただした。
市長は「そうならない中長期的視点で魅力あるまちづくりを進め、来遊客と市民に還元することを考えたい」と述べた。
杉山利勝氏は、熱海市が入湯税を徴収していることから新たに宿泊客を課税するとなると、「宿泊者の立場からすれば二重取りになる」と指摘し、すでに宿泊税を導入している大都市は入湯税に依存していない構造的な違いを強調し、熟考を求めた。
「熱海市の平成28年度の入湯税額は自然収入額の約4・5パーセント、4億3500万円を占める。一方、宿泊税を導入している大都市は入湯税は大きな財源ではない。人口約1300万人の東京都の入湯税額は約3億3千万円であり、約886万人の大阪府は約2億4600万円。約142万人の京都市は1億900万円で、来春導入する約45万人の金沢市は約3500万円。入湯する行為と宿泊する行為は別になっている」と強く訴え、さらに続けた。
「熱海市の宿泊客は温泉に入ることを目的に宿泊施設を利用しており、本市においては泊まるという宿泊行為と温泉に入るという入湯行為はほぼ同じ。宿泊者の立場からすれば税の二重取りになる」と指摘し、市長の考えをただした。
市長は「熱海に泊まり、温泉入ることを目的のお客様や宿泊業者の方々からすると税が2回課税されることから二重取りではないかといった指摘はもっとも」とした上で「地方税法上の定理では宿泊税と入湯税は、納税義務者が宿泊客と入湯客と異なるため、税法上の観点からは、それぞれ課税することに問題は生じない。いずれにしても一体論としてそのようなご指摘、ご懸念をいだだくことはその通りであり、丁寧な説明と慎重な議論を尽くし、来遊客、市民双方にとって魅力的なまちになっていく仕組みづくりを行なっていく」と理解を求めた。
初日は7氏が登壇し、5氏が宿泊税をついて質問。大半が導入を疑問視する内容が占めた。宿泊業者との話し合いについては、市長は「宿泊税は新たな財源の候補として選挙公約にかかげたものであり、当選後まだ間もないため、今後しっかりと議論を深めてまいりたいと考えている」と述べた。
(熱海ネット新聞・松本洋二)
🔸京都市の宿泊税 宿泊施設が利用者から徴収し、市に納める。課税額は1泊の宿泊料金2万円未満が200円、2万円以上5万円未満が500円、5万円以上が千円。修学旅行生は課税対象外。今年10月から導入。
🔸入湯税 地方税法に定められている、温泉などで徴収される市町村の税金。課税されるのは、鉱泉施設があるホテル、旅館、スーパー銭湯、健康センターなど。税額は1人1日当たり150円。
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