
熱海サンビーチの特設舞台で5月19日夜、能楽「熱海の森羅万象に捧ぐ 月の道 薪能」が開かれた。日が暮れ、幻想的な月明かりと篝火(かがりび)がたかれた会場には、熱海湾の潮騒とともに「ヨー、ポン」の掛け声や鼓(つづみ)音が響き、2100人の観客を幽玄の世界に誘った。
今回の舞台のために作られた能作「水月」では、室生流能楽師・辰巳万満次郎さんがシテを務め、満月が海面を照らす「月の道」を通って船で登場。ゆっくりと舞台に降り立ち、自然と戯れ、清らかな月の光と遊ぶ風情を表現。熱海の森羅万象に優美な舞いを捧げた。熱海では、満月の夜、相模湾の水面にこの地特有の自然現象である「月の道」が出現する。この夜も幻想的な月明かりの下、闇夜に浮かぶ舞台の上で幽玄な様が繰り広げられた。
4回目となる熱海サンビーチでの薪能は大型観光企画「静岡ディスティネーションキャンペーン(DC)」の一環で開催。熱海笛怜会のお囃子と湘南なぎさ連の阿波おどりで開幕。来宮神社の雨宮盛克宮司による舞台お祓いの儀に続いて、熱海芸妓が舞を披露。齋藤栄市長と中島幹雄熱海市観光協会会長による火入れ式後は、花柳あらたさんが常磐津「東都獅子」を、善竹十郎さんが狂言「棒縛」を熱演した。
能「水口」のあとは、熱海の海上に浮かぶ月の美しさを表現した小鼓と笛による一調一管の新作「弄月」と続き、辰巳満次郎さんが演じる大トリの能「天鼓」で閉幕した。
(熱海ネット新聞・松本洋二)
今回の舞台のために作られた能作「水月」で熱演する辰巳万満次郎さん
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