10月27日まで開幕中のアート博覧会「ATAMI ART EXPO(アートエキスポ) 2019」で異彩を放っているのが、起雲閣に展示しているアタマンチャック中山奈穂美さんの「フェズ刺繍」。モロッコ最初のイスラム王朝の都フェズの伝統の刺繍と自身が制作した作品を紹介している。
熱海市の多賀、網代地区は、伝統的な地元文化を継承する古くからの住民と市外から移り住んだ気鋭のアーティストが交流しながら“文化村”を形成している。中山さんも下多賀・山伏峠近くに工房「楓窯」を構える夫でカナダ人陶芸家のディビット・アタマンチャックさんと制作活動をするとともに、都内でフェズ刺繍の刺し方を教えている。
中山さんは、東京の文化服装学院でデザインを学び、デザイナーとフォトグラファーの仕事をしていたが、39歳の時に思いたって開発途上国の国づくりに貢献できる人材を現地へ派遣する「青年海外協力隊」(独立行政法人国際協力機構、JICA)に応募。アフリカ大陸の最北端、ジブラルタル海峡を挟んでスペインの対岸に位置するモロッコ王国で洋裁を教え、地域発展に協力した。
その間に身につけたのが、フェズの伝統刺繍。幾何学模様で表裏がリバーシブルに仕上げる。美しい青が特徴だ。
「現地では、砂漠に住む人たちに洋裁を伝えるとともに、フェズ刺繍も教えました。首都ラバトから東へ200キロのフェズは1000年の歴史を持つ最古の都市で現在でも文化の中心都市。砂漠ではフェズ刺繍を知らない女性も多く、フェズ刺繍を学習して生活が豊かになった人も多い。その経験を生かし、いまは日本で差し方を紹介しています」
日本でフェズ刺繍を教えるのは中山さん一人。チュニジア王国大使館も彼女の取り組みを支援している。布目を数えながら直線だけで幾何学模様を刺し、表と裏に一度ずつ糸を通して表裏を全く同じように仕上げる手法は、他の刺繍に比べてはるかに時間と手間がかかるが、刺し方の基本を学べば、モチーフ1個の制作は約8時間という。ランチョンマットなどに使えば、食卓がエキゾジックなモロッコ風インテリアに華やぐ。
熱海芸術祭の一環で開催している同エクスポは、前身の「多賀網代文化祭」から通算して10回目。南熱海のアーティストは多士済々ー。
(熱海ネット新聞)
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