
観光客でにぎわうジャカランダ遊歩道で、ラン科の野草「ネジバナ」がひっそりと可憐なピンクの花を咲かせている。花がらせん状にねじれて咲く様子から名付けられた。「モジズリ」とも呼ばれ、梅雨の時季に小さな花を付ける。ねじれ模様に染めた布の忍捩摺(しのぶもじずり)に例えた「モジズリ」の別名もある。
古今集には〈陸奥のしのぶもぢずり誰ゆゑに乱れむと思ふ我ならなくに〉の歌がある。〈しのぶもぢずり(忍捩摺)〉は信夫郡(福島県)の名産で、石に草木をこすりつけ、布にその色を移した染物。福島競馬場近くの文知摺観音には文字摺石という石があり、あの松尾芭蕉も「おくのほそ道」の紀行で訪ね、〈早苗とる手もとや昔しのぶ摺〉の句を詠んだ。同観音は筆者の故郷に近く、小学生のころに訪れた遠い記憶がよみがえった。
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