
6月定例会を傍聴していて、「案の定、選挙戦が始まっている」と感じたのが、13日の米山秀夫議員(公明)の質問だった。起雲閣の指定管理問題である。
熱海市は起雲閣をはじめ、マリンスパあたみ、姫の沢公園など7施設は指定管理者制度を採用し、収益アップを目的に民間業者に業務委託している。条例で定めたもので指定管理者の指定は「公募」が前提、議会の議決もいる。が、斉藤栄市長は起雲閣は公募を行わず、特命として働く女性のグループ「NPO法人あたみオアシス21」に業務委託してきた。市民・男女共同参画、指定文化財である同施設への思い入れ等を汲みしての決定だった。
契約は平成24年4月から3年。議会側は来春以降の指定管理者については、公募・非公募、指定管理料金(年間5089万円)、女性だけの形態などを総合的に判断し、オアシス21も含めた指定管理者候補者のなかから、9月定例会で審議する予定でいた。
マリンスパあたみ、小山臨海公園(南熱海マリンホールを含む)もそういう手順を踏んできたのだが、市は今議会を前に「この2年間に一定の成果を上げており、継続するのが望ましい」とし、「契約満了後もオアシス21を特命で選定する」方針を打ち出した。なら6月定例会で議案に組み込めばいいものをそれはせず、9月定例会で議案に上げるという。この摩訶不思議さ。ともあれこの時期に「起雲閣の管理はこれまで通り」をぶちあげたことで、とりわけリベラル層の女性に人気の高い市長の株はさらに上がった。
米山議員の疑念もそこにある。実績も残し、収益を上げているのなら堂々と公募し、応募してもらえばいいだけのこと。オアシス21側も「公募になれば、私たちも手を上げさせていただく」と自信を示し、中島美江理事長をはじめ11人の女性スタッフたちは身を粉にして働き、研さんを積んできた。
にもかかわらず…。あえてこの時期に「これまで通り」と方向性だけを示したのは-。「9月市長選を見据えたオアシス関連の女性票が目当てだよ」。議員控室ではそんな声が聞かれた。いささかえげつないが、3選を目指す市長は思いのほかてだれの剣客。涼しげな眼鏡の奥にしたたかな戦術がのぞく。
(編集主幹・松本洋二)
【熱海市の指定管理施設と管理者】
▽マリンスパあたみ=シダックス大新東ヒューマンサービス(株)
▽熱海市駐車場=財団法人熱海市振興公社
▽初島高齢者健康増進施設=初島区
▽姫の沢公園、同自然の家=財団法人熱海市振興公社
▽熱海駅前自転車等駐車場=社団法人シルバー人材センター
▽起雲閣=NPO法人あたみオアシス21
▽小山臨海公園(南熱海マリンホールを含む)=NPO法人atamista・シンコースポーツ
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