
昨夕放送されたNHKテレビ「夫婦の絆 甲斐性なしと静かなる女優」を見ていて、胸がせつなくなった。
テレビ「太陽にほえろ!」や映画「魔界転生」などで活躍した女優・佳那晃子さんと、作家・源高志さんの夫婦の絆を描いたドキュメント番組である。
バブル真っ盛りの1988年、33歳だった佳那さんは人気放送作家と結婚、幸福の絶頂にあった。しかし、なんとやらの崩壊で夫が立ち上げた会社が事業に失敗。3億円もの負債を背負った。
借金地獄に陥った佳那さんは「少しでも早く立ち直ってほしい」との思いから、嫌な仕事も全て受け、壮絶な試練と向き合いながら夫を支えた。
10年かけて返済を終えた夫婦は、殺伐とした都会の生活に辟易し、「海の近くで過ごしたい」と熱海へ移り住む。
しかし、心穏やかな生活は長く続かない。佳那さんが腎臓の病気ネフローゼ症候群に襲われる。闘病生活3年目、くも膜下出血で倒れた。昨年1月のことだった。
意識を失った妻を少しでも良い環境で治療させようと、熱川温泉病院に入院させ、夫の介護生活は1年たった今も続いている。
夫は熱海市郊外の古びたアパートに越し、細々と執筆活動。その収入の全てを妻の医療費につぎ込み、明日をも知れぬ暮らしを続けている。苦労をかけた妻に報いるためだ。
ここまではいい話だなあ、と見ていたのだが、ここからがいけない。
夫が脅えているのが、水道の給水停止。よほど強く督促されているのだろう。毎日、介護を終えて家に戻ると、蛇口をひねり、安堵の笑顔。バスタブに水を張って“有事”に備えてもいる。
公共料金を払わない方が悪い、といえばそれまでだが、それが出来ない人もいる。財政再建を急ぐあまり、非情にもライフラインを絶たれ、お店を閉めざるを得なかった飲食店やホテル、熱海を離れて行った市民を何人もみてきた。
昨年、熱海市の人口は429人減少したが、原因は少子高齢化だけではないような気がする。
熱海を「理想郷」と信じて頑張ってきた人たちの希望を奪ってほしくない。
(編集主幹・松本洋二)
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