
プロ野球が開幕し、巨人軍はリーグ4連覇に向けてスタートを切った。そんななか、あの長嶋茂雄さんにも愛された市内中央町の「森ちゅん寿し」が3月をもって閉店。惜しまれながら約45年の営業に幕を下ろした。
先月29日に橋本一実県議の街頭演説応援で駆けつけた民主党政調会長の細野豪志衆院議員も「安くて、美味しい」森ちゃん寿司のファンだった。熱海を訪れると、決まって親友の日本画家坂本武典氏とともにカウンターに座り、森ちゃんが握る絶品寿司の数々を味わった。最高の食材を使いながら廉価で提供できるのは、森ちゃんが1人で切り盛りしているから。細野氏は日本創生のお手本として感じるものがあったのだろう。
「森ちゃん」の愛称で慕われた店主の赤津守さん(79)は茨城県日立市の出身。東京・銀座のすし店で修業を積んだ後、熱海のすし店で腕を磨いた。東京五輪と前後し、観光地熱海は最盛期だった。昭和44年に独立し、名前の「守」と巨人軍の名捕手にあやかって「もり(森)ちゃん」を店名にした。
「当時の熱海は新婚旅行のメッカ。あの頃は、東京で挙式を終えたカップルが熱海で初夜を迎え、翌朝に京都へ向かった。いきなり、京都への移動では時間ががかかり、ダンナが待てなかったのでしょう(笑い)。それで熱海は賑わった。どの店も驚くほど繁盛したものです」
V9時代のジャイアンツも思い出深い。巨人軍は毎年12月に熱海後楽園ホテルで納会を開く。宴会が終わると当時の選手たちは夜の街へ繰り出し、1年の疲れを熱海の人たちと癒やした。森ちゃん寿しにも様々な選手が訪れ、店内には貴重なサインなどがさりげなく飾られている。「森ちゃん」は今でも大事な試合では、巨人関係者から贈られたジャイアンツのユニホームを着て、巨人戦をテレビ観戦しながら寿しを握り、客とジャイアンツ談議を交わすのが楽しみだった。
その隠れた名店も、店舗の老朽化に伴い、暖簾を下ろす日が来た。先月始めから「森ちゃん寿しが店じまい」の情報が伝わり、地元ばかりでなく閉店を惜しむ客が全国から駆け付け、満席が続いた。筆者も根付け鯵の刺身とこだわりの藻塩とスダチを絞った人気の穴子、トロと七尾たくあんをのりで巻いたトロたくを思い出に注文した。美味。
「今年はジャイアンツの試合を思いっきり楽しめます、今シーズンで4連覇。そして東京五輪まであと5年…」。巨人のV9と熱海の絶頂期は重なる。森ちゃんが巨人の連覇にこだわるのは、斎藤栄市長が掲げる「日本でナンバー1の温泉観光地づくり」を願ってのものなのか。お店はゲームセットしても、応援の方は延長戦に突入―。
(編集主幹)
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