【市政】斉藤市長の所信表明演説 全文掲載

9月7日投開票の熱海市長選で3選を果たし、第23代市長に就任した斉藤栄市長(51)は25日、熱海市議会9月定例会で所信表明演説を行った。全文を掲載する。

 

はじめに
今回の熱海市長選挙においては、二期8年の齊藤市政の実績に対する評価と、今後4年間のビジョンに対する期待をいただき、当選させていただいたものと感じております。選挙結果を踏まえ、これまでの市政運営に自信を持つと同時に、市長としてその責任の重さに、改めて身の引き締まる思いであります。
なぜ、海、山、温泉に恵まれ、首都圏に近接した熱海市が、過去50年間にわたり、残念ながら衰退の道を辿ってきたのか?私は、政治にその要因があると考えています。そして、なぜ、私が三度市長に選ばれたのか?私に対して、「しがらみのない公平な政治を行ってほしい」という市民の大きな期待があるからだと感じます。今後とも、市民の皆様の期待に応えるべく、しがらみのない政治、公平な政治を貫いてまいります。

齊藤市政の二期8年
齊藤市政の二期8年をふり返れば、それは新たな挑戦の連続でありました。「財政危機宣言」を契機とした市財政の徹底した情報公開に始まり、「営業する市役所」を掲げた、行政によるメディア広報まで、これまでの熱海市役所の常識を打ち破る施策に次々と取り組んでまいりました。また、職員の給与削減や学校の統廃合など、政治家として嫌われることも厭わず、決して逃げることなく、市政の課題に真正面から取り組んでまいりました。二期8年の間、来る日も来る日も新たな課題との闘いでした。そしてこの8年間、一日も休まずに闘い続けてまいりました。
一期目は「財政再建」が市政の最重要課題でした。「財政危機宣言」をスタートに、「まず、市役所自らが身を削る」の方針の下、職員数や職員給与費の削減などを行った後、各種公共料金の改正やゴミ処理の有料化など市民の皆様に様々なご負担をしていただき、市の財政再建に全力で取り組んでまいりました。その結果、数十年来の市政の課題であった新庁舎や新生熱海中学校などの大型建設プロジェクトを完成させながら、同時に、市民の皆さんの赤字である不良債務を8割以上減らし、市民の皆さんの貯金である基金残高を約25億円増やすことができました。
なお、本来条例に基づき支給する市長の退職手当につきましては、まず、トップ自らが財政再建に取り組む意気込みや不退転の覚悟を市民の皆様や職員に示す必要があることから、一期目及び二期目においては例外的に受け取りを辞退するとともに、市長給与の大幅な削減も行ってまいりました。また、5年間にわたる行財政改革プランの終了した平成24年度に、19年ぶりに市長の給与月額を15%削減いたしました。二期8年で市財政の健全化が大きく進み、財政の危機的状況から脱したことから、三期目においては通常どおり、市長の退職手当を受け取ることといたします。
二期目は市民の皆様におかけしたご負担を少しずつお返しすべく、「元気な経済」と「豊かな暮らし」の実現に力を注いでまいりました。
「元気な経済」では、市民の皆様のご協力のもと、テレビ番組などの誘致やロケ支援によるシティプロモーション活動や、官民連携した熱海ブランドの発信、また、梅・あたみ桜・ジャカランダの整備とそれらを活用した市内回遊の仕組みづくりの実現などにより、平成25年において、宿泊客は前年対比7.4%増加する効果を生むことが出来ました。
「豊かな暮らし」では、中学3年生までの入院・通院医療費の完全無料化や学童保育の開設・拡充、民設民営による中央保育園の完成、子育て支援センターなどの拡充による子育て世代への支援、また、湯楽YOU楽(ゆらゆら)体操の普及や膝痛・腰痛予防対策教室の実施、がん検診車の導入など、介護予防・働き世代への健康づくり増進など市民福祉の向上に寄与することが出来ました。

「新生熱海」の実現
熱海は今、上げ潮にあります。財政再建からスタートし、大型建設プロジェクトの完成、若者を中心とした来遊客増、新たな民間投資案件の着工など、熱海は着実に良い方向に向かっております。しかし、ここで少しでも気を緩めれば、熱海はすぐに元に戻ります。そして全国の多くの自治体と同じように長期的に衰退してゆく可能性があります。その意味で熱海は今、正念場を迎えているといえます。齊藤市政の三期目は、これまでの一期目、二期目の単なる延長ではありません。変わりつつある熱海をさらに加速させ、圧倒的な熱海、平成における温泉観光地の横綱としての熱海をつくってまいります。
同時に観光・商業振興で稼いだ原資を活用して、これまで以上に福祉や教育などを充実させ、市民の皆様の暮らしの豊かさに主眼を置いた「住まうまち熱海づくり」を進めてまいります。この「住まうまち熱海づくり」は、これまでの二期8年間、まず財政再建、次に観光振興が優先される中で、やりたくてもやれない分野でした。三期目となった今、市民の皆様の暮らしを豊かにするというテーマに対して本格的に取り組んでまいります。
以上申し上げた新しい熱海、「新生熱海」の実現が、今後4年間で私が取り組む基本的な政策方針であり、その具体的内容については、次のとおりであります。

第1の柱「日本でナンバー1の温泉観光地づくり」
第1の柱は「日本でナンバー1の温泉観光地づくり」です。2020年の東京五輪を念頭に、シティプロモーションを更に強化しながら、観光まちづくりと経済活性化に取り組んでまいります。
まず大切なのは、熱海の歴史や文化を活かした「本物」の地域資源を活かしていくことです。これまでも明治時代に政財界の要人や文人墨客の保養地として発展した熱海のシンボルである梅園の再整備や市道伊豆山神社参道線の階段の修繕などに取り組んでまいりました。今後も、熱海の歴史・文化を活かした街並みや拠点の再整備に取り組んでまいります。
次に、市内遊休地・遊休施設への民間投資の促進に今まで以上に取り組みます。現在、JR熱海駅舎・駅ビルの着工、駅前高層マンションの建設再開をはじめ、市内で様々な民間投資が動き出そうとしております。この動きを加速できるよう、本市の誘致活動をさらに活性化させるとともに、規制の見直しについても検討を進めてまいります。
商業活性化については、熱海ブランドの確立やA-biz(熱海市チャレンジ応援センター)による相談などを行い、商品開発やPRなどで頑張る事業者を支援するとともに、約1万件の別荘等所有者の皆さんへの積極的な情報発信などにより、来訪頻度や市内消費の拡大に取り組みます。
観光まちづくりの実現には、市民や産業界の皆さんと行政がそれぞれの得意分野で役割を担いながら、同時にしっかりと連携をしていく官民協働の体制が必要です。市内観光協会、連合会等の体制や方針を再確認した上で、官民による観光まちづくり組織の設立を目指していきます。
最後に、補助制度によって旅館・ホテルの耐震化を促進するとともに、耐震化計画を策定して順次橋などの耐震化に取り組み、観光客と市民の皆様の生命と安全を確保してまいります。

第2の柱「住まうまち熱海づくり」
第2の柱は、「住まうまち熱海づくり」です。
熱海市の人口は、今から30年後には約43%減少することが国立社会保障・人口問題研究所の推計で試算されており、本年5月の民間組織「日本創生会議」の発表でも消滅可能性都市と指摘されております。昭和40年代から50年間、ほぼ一貫して減少し続けてきた人口を増やすには、構造的な課題の解消に挑戦していかなくてはなりません。
近年の熱海市の人口は、働き世代が市外に転出し、高齢世代が市内に転入する構造になっており、出生率の低さもあって、本市は県内でも有数の少子高齢化都市となっています。子育て世代に市内に住んでもらうための子育て支援策の強化など、人口増加策に取り組むと同時に、人口の4割以上を占める高齢者の皆様が豊かさを実感して暮らせるように市民生活の改善に取り組んでまいります。
まず、「(仮称)子育て世代応援プロジェクト」の実施です。子育て世代が、働く場所、稼ぐ場所づくりとあわせて、市が所有する住宅なども利活用し、「住む」環境づくりに取り組んでまいります。また、子育て支援策、児童福祉、教育も本格的に充実してまいります。
次に、高齢者を大切にするまちづくりです。デイサービス等の介護施設を併設した市営住宅モデル事業を検討するとともに、見守りサービスの充実など高齢者の孤立化防止を図ります。また、買い物や病院等の用事で街中へ外出しやすいように交通手段を充実・改善し、高齢者の移動しやすい街をつくってまいります。
更に、市民の皆様の英知を結集して、旧岡本ホテル(上宿町用地)に市民ホール、図書館などからなる「市民の集う場」の整備を行います。規模、内容、利用頻度などについて協議を重ね、無理・無駄の無い、将来にわたって誰からも愛される施設を造り上げます。
続いて、今月から工事を再開したさくらの名所散策路の整備とあわせて、地域の皆様にご参加いただき熱海高校魅力向上のための懇話会を開催するなど、県立熱海高校の人材育成・輩出を強化してまいります。熱海高校の強化は、卒業生の地元への定着、ひいては市外への人口流出対策につながるものと考えます。
最後に、元気でいきいきした市民生活の基本は健康づくりです。様々な受診方法の拡大によって他都市と比べて低迷している健診受診率の向上を図るとともに、健康状態を自己点検する基本チェックリストを活用した介護予防などにより、全ての世代の健康度の向上を図ります。

第3の柱「市民のための市役所づくり」
最後に第3の柱は、「市民のための市役所づくり」です。
財政再建の取り組みは、市民の皆様とともにこれまで一定の成果を上げてきました。引き続きムダを省く不断の努力と質の行革を進めるとともに市民のための市役所づくりに取り組んでまいります。
まず、公共施設マネジメントで市内全ての公共施設を見直します。例えば、ごみ焼却場施設は10億円規模の大規模修繕をしなければ安定的な運転ができず、また、橋りょうの約4割は建設から50年を越えております。更に、人口が減少する中で学校、公園のあり方も問われております。こうした問題意識から、公共施設白書、資産経営の方針を速やかに作成し、総量の管理、運営費用の合理化、サービス向上の三つの視点から、公共施設の再編や老朽化対策などに取り組んでまいります。
次に、市民と行政との距離を縮め協働を推進してまいります。市民生活の実態、そして実感に即した改善を重ねていくために、これまで以上に市民の皆様との対話を重視し、直接対話の出来る場を設けてまいります。また、熱海駅については、平成27年度中の駅施設の供用開始、28年度中の駅ビル等の供用開始の予定がJR東日本から示されました。駅前広場整備については、駅舎・駅ビルの完成時に向けて最善な運用となるよう、更なる協議を重ね、またタクシー降車場についての実証実験等も行いながら、利便性の高まる改善を実行したいと考えております。
最後に、市民目線で考え、行動できる職員づくりを行ってまいります。私は市の職員が市民の皆様を相手に話を聞く際には、職員は一度自分の仕事の担当の枠をはずし、この方が本当は市役所に何を望んでいるのかを想像力を最大限に働かせて、聞く必要があると考えております。特に「住まうまち熱海づくり」の具体的施策の展開の際には、市民の暮らしを豊かにするという観点から、市役所内部の縦割りを打破し、徹底した市民目線での対話と話し合いを行ってまいります。

おわりに
私は、熱海には過去に二度大きな成長期があったと考えております。一度目は政財界の要人や文人墨客がこぞって熱海に別荘を持とうとした明治中頃から大正にかけて、二度目は多くの日本人の所得水準が上がり、新婚旅行や社員旅行で全国津々浦々から熱海へ来遊した昭和の高度経済成長期です。そして今、平成の時代の中で、3度目の新たな成長期をつくる必要があり、「新生熱海」の実現こそが、そのことにつながると信じております。
私は、選挙戦で訴えた政策を着実に実行に移し、「新生熱海」を実現させることに、どんな困難や圧力があっても決してひるまず、そして屈することなく全身全霊で取り組んでまいる所存です。そして、市民の皆様の負託を受けた今、万が一それを妨げようとする者があれば、市民の皆様への約束を果たすため、断固闘う決意でおります。
「新生熱海」の実現への道は、決して平坦ではなく、多くの苦難があるでしょう。議会、産業界、そして市民の皆様の総力を上げ、取り組んでいかなければなりません。
市民の皆様、そして議員各位にご理解とご支援をよろしくお願い申し上げ、私の所信表明といたします。

平成26年9月25日

熱海市長 齊 藤  栄

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